区役所の役割を明らかにする「横浜市区役所事務分掌条例」が制定され、4月1日から施行される。区のあり方を対外的に示すもので、実務が変わるものではないが、条例制定を機に市から区への権限移譲に関する議論がさらに進むとみられる。
2014年5月に政令市における区の役割拡充などを目的にした地方自治法の一部が改正された。改正法は、区役所の事務を条例で定めることを求めていた。これを受けて横浜市会は15年から議論を開始。今年2月、市長が市会に条例案を提出し、可決された。
これまで市には部局の役割を示した「市事務分掌条例」はあったものの、区役所の事務内容は市条例の下に作られた「規則」の中で定められているだけだった。
役割を明文化
条例には「住民に身近な行政サービスを提供する」「地域における協働を総合的に支援する」など、規則にはない「区役所の役割」が明示された。さらに、地域の課題解決など、必要に応じて、区長が関係局長と協議することも盛り込まれている。
市民局の担当者が「施行後も業務内容は変わらない」と話すように、条例は区のあり方に関する考え方を対外的に示す意味合いが強い。区役所職員からは「従来の業務が明文化され、明確になり、仕事がしやすくなる」と好意的な意見が多かった。
人口が372万人を超える横浜市は、行政効率化や手続きの迅速化などを目指し、以前から区の役割拡充や機能強化、区長への事務委任を進めてきた。
政府の地方制度調査会が12年にまとめた資料によると、市長から区長へ委任されている事務数は20政令市で横浜市が最も多い。例えば、国勢調査に関する事務が区長に委任されているのは全国では横浜市だけだ。
市は区の機能や住民自治を強化する「特別自治市」の実現を目指す。条例案可決の際は、これらの状況を踏まえ、制定後も適宜、条例の見直しを図ることを求める附帯意見があった。
議論の契機に
市議からは「横浜の区役所機能強化は他の政令市より進んでおり、これからも先頭を走るべき」という意見や「区政に区民の意思を反映させる制度作りが必要」など、条例制定を契機に権限移譲や住民自治に関する議論が進むことを期待する声が聞かれる。
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