シベリア抑留の生活を水墨画で伝える 安河内(やすこうち) 崇さん 仲町台在住 88歳
戦争の悲惨さを筆に込め
○…8月15日、第二次世界大戦から68年を迎える。終戦直後、投降した日本軍捕虜がソ連に送り込まれ、鉄道建設などに向け強制労働を強いられる「シベリア抑留」があった。その一人として、2年間の捕虜生活を水墨画で表現し、後世に伝える。自身が戦争を通して感じた悲惨さ、シベリア抑留での自然の厳しさ、飢えの苦しみなどの実体験を筆に込める。
〇…帰国後、故郷の福岡に。仕事で辛いことがあっても「あの時に比べれば」と乗り切ってきた。「人間、一度辛い経験をすれば強くなれるからね」と笑顔。厳しい労働生活で得た教訓の一つだ。定年退職を機に体験記「粉雪舞う日に」を出版し、今年の5月にはパワーポイントで講演を行うなど、時代に合わせて表現方法を変えてきた。描いた作品や文は淡々としているが、それが見た人に当時の厳しさの想像を膨らませる。そんな作風で「戦争とは何か」と疑問を投げかける。
〇…終戦直後は満州にいた。降伏の知らせを受け、帰国しようと汽車に乗ったが、何日乗っても港に着かない。太陽の方向を頼りにしても、汽車は西に西に進んでいく。「バイカル湖が見えた時に『帰れないんだ』と感じた。絶望しかなかった」。それは2年間の労働生活の始まりだった。零下30度の中での厳しい労働、少ない食糧や高いノルマに苦しみながら「終われば日本に帰れる」と一心不乱に働いた。盲腸を患い、苦しんだ時もあった。しかしそれがきっかけで日本へ帰国することに。「港で日本国旗を見るまで本当に帰れると思っていなかったよ」。終戦からちょうど2年後の8月15日。帰国当時の体重は36kgだった。
〇…息子が横浜に移ったのをきっかけに都筑区に。現在は愛犬と緑道を散歩するのが楽しみになっている。「話すのは苦手だけど、元気なうちは伝え続けたい」。68年経過した今も残る想いを等身大で描き、若い世代に語り継いでいく。
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