精神障害の日常、動画に ほっとぽっと 患者の退院促進へ
精神障害者の地域生活支援拠点「ほっとぽっと」。同所では昨年7月から、ボランティアが当事者の生活を記録し、動画制作に取り組んできた。完成した動画は、現在入院中の精神病患者に披露される。
この取り組みは入院患者の退院促進が目的。地域で暮らす当事者の日常を動画で伝え、退院後の生活を具体的にイメージしてもらおうというものだ。
ほっとぽっとでは昨春から、インターネットなどを通じてボランティアを募集。さらに動画制作の技術を持つ団体に協力を依頼し、7月の説明会から取り組みがスタートした。制作ボランティアには当事者や精神保健福祉士、会社員など7人が集まった。
担当の佐久間陽子さんは「いろんな立場の人と一緒に制作したいと広く呼びかけた」と話す。
区外から参加した沼田真里さんは「内容が面白そうだと思って」。沼田さんは「プロではないので、当事者と交流するときは緊張していた」と振り返る。参加者はほっとぽっと利用者と交流を重ねて、撮影協力者を探したため、撮影にたどり着くまで大変だったという。沼田さんは「時間が経つにつれボランティアという意識はなくなり、『仲間』として過ごせたと思う」と手応えをにじませる。
活動を通じて「(他区の詳細はわからないが)旭区は支援が活発だと思った。地域の中にも支援が広がりつつあるが、一般の人と当事者がもう少し交流する機会が増えていけば」と課題を話す。
編集された動画は全部で4本。一般には公開されないが、入院中の患者に披露される。
支援体制の充実・理解が不可欠
旭区によると、昨年3月31日時点で区内の精神障害者の把握数は、6180人と横浜市内で最も多くなっている。また昨年4月1日時点で精神病院病床数は1379床と、市内の4分の1を占める。区では2012年度予算案で、「精神障害者地域交流促進事業」に110万円を計上。精神障害について研修などを行い理解を深めるとともに、当事者への相談や支援体制を整えていく方針だ。
佐久間さんは「旭区は当事者や家族、ボランティア、関係機関の職員が交流するなど、ネットワーク作りは進められている」とする一方、「地域と病院の情報交換などはなかなか難しい」と指摘。さらに「当事者が日常生活の中で困ったときに、地域で気軽に相談できる環境になれば嬉しい。ちょっとした(地域の方の)声かけは、当事者に心強い存在になる」と話している。
動画制作に参加し、ほっとぽっと利用者である澤田高綱さんは、「行政には、障害を持つ人たちの本当に必要なものを理解してほしい」と訴える。「当事者の声を制度に反映させてほしい。生活場所や環境によって必要な支援は異なるので、そこを理解してもらい、もっと充実させてもらえれば」としている。
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