供給に規制の壁
「水素自動車」の普及に欠かすことができないのが、燃料となる水素を供給する、「水素ステーション」の設置促進だ。現在国内で稼働している商用の水素ステーションはごくわずか。今後の課題や展望について、ステーション建設に携わるトキコテクノ(鶴見区)に話を聞いた。
トキコテクノは燃料の計量機などを開発・販売している企業。01年ごろから「水素ディスペンサ」の開発に取り組んでいる。
建設の課題のひとつに「法制上の問題がある」と話すのは同社新エネルギー部長の小笠原恒治さんだ。水素は高圧ガスで供給されるため、ガソリンスタンドを規制する通常の消防法ではなく「高圧ガス保安法」で規制される。例えば、敷地の境界と各機器を8m以上離さなければならず、一般的なガソリンスタンドに比べ広大な敷地が必要だ。
また住宅地に作る場合、高い障壁の設置が必要で「周辺住民に余計な威圧感を与えてしまう」という。
さらにコスト面の課題もある。ステーションの建設にかかる費用は約5億円。「基準が国外に比べて厳しいことは事実。結果的に部品や技術のガラパゴス化が進み、部品も高くなる」と小笠原さん。「安全性は最優先だが国際規格に合わせていくことも必要」と話す。
同社は規制をクリアしつつ能力を向上させる研究を日夜行っている。最新のディスペンサは12年度の製品に比べ容積を50%とした。「水素は危ないというイメージがあるが、扱い方を間違えなければ安全なエネルギーだ。今後も安全性や能力向上、コスト低減をめざし開発を続けたい」。
社会への浸透に向け
横浜国立大学工学研究院(保土ケ谷区)の一角にある、水素エネルギーの研究拠点「グリーン水素研究センター」。センター長を務める太田健一郎さんは、「水素自動車」の課題の一つであるコスト面について「それほど心配していない」と語る。触媒となる白金(プラチナ)は水素と酸素の化学反応に必要だが、高価で資源量も少ない。同センターではコスト削減のため、白金の代替材料を用い、実用化に向けた研究を進めている。
正しく使えば水素は安全なエネルギーであると太田さんは強調し、「水素は分子が小さく、空気よりも軽い。万が一漏れても、燃え始めた瞬間に上昇して消えるため、引火して大惨事になる可能性は低い」と話す。水素が爆発するのは密閉空間で、一定の比率で空気と混ざり合い、そこに火種があった場合。国内ではこれらの条件で何度も実験を重ねてきたといい、「大きな事故が起こらないという実績を積めば、安全性が分かってもらえるのでは」と普及の可能性を示した。
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