通常よりも大きな文字や楽譜、画像が掲載された手作りの教科書が、ボランティアの手により少しずつ出来上がっていく。弱視の子どものために教科書や副教材を拡大した写本を製作しているのは「拡大写本れんげの会」(小泉みすず代表)。弱視児を支えるこの活動は、12月で25年目の節目を迎える。
同会は1991年12月に弱視の子どもを持つ親と友人らで立ち上げられた。依頼は全国拡大教材製作協議会を通して全国各地から受けている。癖のない文字の書き方を練習し、教科書を元に一文字一文字、大きな字で丁寧に写しとっていく。近年では手書きの依頼も減り、パソコンでの製作がほとんどだ。現在は13人の男女が毎週金曜日に泉図書館で活動。同会を含む18団体が所属する神奈川県拡大写本連絡協議会では、勉強会を開催し、意見や手法の交換もしているという。
多い時期には年間で250冊超を製作したこともあるという、れんげの会。パソコンで文字入れやレイアウト等を行い、最低4回の校正作業を行う。出来上がったページを丁寧に貼り合わせ、背表紙を付ければ完成だ。学年が上がるにつれて教科書数は増え、内容も複雑になる。種類によっては5カ月以上かかる教科書もある。拡大によってページ数は増えるが、持ち運び等を考慮し、分割。10冊を超えることもあるそうだ。
本はオーダーメード
2011年からは出版社が標準拡大教科書を発行することが義務化され、依頼は激減したという。昨年の製作数は46冊。だが、今も依頼が来るのは、拡大教科書でも読みづらく、より大きな文字の教科書を必要とする子どもたちが全国にいるからだと立ち上げメンバーの高橋洋子さんは話す。
文字が小さすぎるのであれば、単純に教科書を拡大コピーすればよいというものではない。拡大すると文字間や行間も広がり、ページ全体も見づらくなる。また、読みやすい文字の大きさは一人ひとり異なるため、打ち合わせも行っている。つまり、オーダーメードの教科書だ。中には白黒を反転させたものも。「こんなに見やすいなんてと喜んでいただけたときは嬉しかった」と小泉代表。
製作にあたり、苦戦するのはレイアウトだ。全体の流れ等に合わせて配置を変えたり、あえて画像を拡大しないこともある。「すべて大きいと画質が粗くなったり、見づらくなったりする。表などは拡大鏡を使って見た方がきれいに見られる」と話す。
教科書製作の空き時間には、出版社等の許諾を得て、児童書の拡大写本にも取り組む。現在、『ズッコケ三人組』シリーズは22冊目まで完成し、泉図書館の児童書コーナーに並べられており、手に取って見ることができる。
問い合わせは小泉代表【電話】045・864・3530。
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