泉区美術会の会長を務める 森脇 ヒデさん 白百合在住 83歳
”大樹”になりたい
○…「来年は10回の節目。きばってやらなくちゃ」。18日までテアトルフォンテで開催中の泉区美術展には会員のほか、一般から公募した作品が並ぶ。技量や作風を問わない無審査のため、美術家も互いに新たな刺激が受けられる。80歳を超えた現在も非常勤で働きながら作品づくりに励み、多忙な会長職もこなす。活力あふれる生活を送ることができるのは「周囲の支えのおかげ」と感謝の言葉を何度も口にする。
○…2008年に会が発足。会長になって3年目。自身の役割は「会員間のスポンジみたいなもの」と話す。どんなささいなことも一存では決めず、信頼できる実行委員会に諮る。今回、実行委員からの提案で、熊本のためのチャリティー作品の販売を行うことになった。口にしたことはなかったが、自身は熊本出身。会としても何かしたいと考えていたところに持ちあがった仲間からの嬉しい提案。「何十万とはいかないけれど、少しでもできることを」と故郷を思う。
○…11歳までの7年を満州で過ごした。学生時代、先生について習っていたという絵だが、福祉施設で働き始めたころ「生半可なことはできない」と一時やめると決めた。だが描きたい思いは抑えきれず、時間を見つけては絵筆をとった。作品づくりに本格復帰したのは65歳で施設の院長を退いたとき。その年に初出品した作品展で入選し、第2の人生を美術家として歩み出した。
○…入選時から長年書き続けているのが、大樹の根をテーマにした『梼(とう)』という作品だ。神が宿るといわれる大樹を描いていると気持ちの整理にもなるのだという。良い樹があると聞けば、全国各地、山奥や屋久島にも足を延ばした。「当時はまだ60代。今の私からすれば若かった」とはにかむ。「樹はねじ曲がっていても良い環境ならまっすぐに伸びる、朽ちていても新芽が出る。私も大樹みたいな存在になれたら」
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