子どもの傷害予防に取り組むSafeKidsJapanの理事長を務める 山中 龍宏さん 緑園在勤 68歳
子どもの事故を防ぎたい
○…傷害予防に打ち込むきっかけとなったのは1985年のとある事故だった。小児科医として勤務する病院に、プールの排水口に吸い込まれた中学生が運び込まれた。すでに手の施しようがない状態。過去に全国で何件も同様の事故が起きていたが対策がされず、悲劇が繰り返されていることに危機感を覚えた。「蓋を閉めれば防げたはず。他の事故も改善できる原因が必ずある」。日常の事故を含め、多くが「不慮の事故」ではなく「予測できる傷害」だと繰り返し強調する。
○…SafeKidsは世界25カ国にある国際組織。日本では2年前に設立され、転倒や火傷、窒息など、全国60人の会員が子どもの傷害予防に取り組む。「子どもの事故は親の不注意や責任と言われることが多いが、心がけだけでは防ぎきれないこともある」。誤飲を防ぐには口の大きさ、転落を防ぐには身長に対する柵の高さを知ることが鍵となる。「具体的でより確実な予防方法を伝えていきたい」と意気込む。
○…保護者らへの啓発だけでなく、企業や行政に働きかけることも予防の道を切り開く1つの策だ。事故現場を検証し、何例も事故が起きているという根拠を示し、製品の改良や安全基準改訂、法律改正を提言することもある。「保護者の皆さんも『自分の不注意で』と終わらせず、事故の情報を医師や消費者庁に伝えてください」
○…広島で生まれ、7歳の時、家族で神奈川に移り住んだ。医師の道を志したのは叔父の影響。学生運動真っただ中だった東京大学医学部を卒業し、総合病院などに勤務。17年前に緑園こどもクリニックを開いてからは病気・けがの診療だけでなく、学校での悩み相談を受けることも。「何でも相談みたいなもの」と笑うが、これも厚い信頼があるからこそ。休診日も講演に執筆活動にと忙しい毎日を送るが、優しい笑顔で見つめる先には、いつも子どもたちの明るい未来がある。
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