著書『薬種御庭番』で朝日時代小説大賞候補に選ばれた作家 高田在子(ありこ)さん (ペンネーム) 区内在住 40歳
「人間」書ける喜び
○…「どんな時代であっても、書きたいのは”人間”」。著書『薬種御庭番(やくしゅおにわばん)』(青松書院刊)で「第2回 朝日時代小説大賞」(2010年)の候補に残った。同書は徳川吉宗統治の幕府下、「採薬師」として働いた主人公の心の葛藤を書いた物語だ。「仕事を通して主人公が成長する内容は現代社会にも通じる」と説明する。
○…区内で生まれ育った。中学生のころから詩や物語をノートに書きつづっていたという。「小説家になりたい」という思いは漠然とあった。高校生の進路決定の際、福祉の道を選ぼうとしたものの、小説家への道を捨てきれない自分に気づいた。「中途半端な気持ちで福祉の仕事はできない」と進路を変更し、短大の国文科へ。卒業後は種苗会社へ就職し、勤務しながら小説の勉強を続けた。24歳で会社の同期だった夫と結婚し、退職。27歳で息子を出産したが、夫が出産間近で退職してしまった。「資格勉強に勤しむ夫と子どものおんぶを交代しながら、机に向かったこともあります」と笑う。夫の新しい仕事が軌道に乗り始めた矢先、実家の祖母が倒れてしまった。幼い子どもを連れて介護の手伝いに通う日々。そんな中でも小説を書き続けることはやめなかった。
○…子ども、家、自分の好きなこと…。何を犠牲にするのか悩んだこともある。「専業主婦になって自分の夢を見失ってしまったり、母だから自分の好きなことを優先してはいけないと悩んでいる人もいる。でも私は、夫と子どもが背中を押してくれ、夢を追い続けることができるから幸せ」と感謝する。「一生書かない自分は想像できない」。書き続けられる喜びは何ものにも代えがたい。
○…現在は時代小説の執筆に力を入れるが「どんなジャンルが合っているかは模索中。とらわれず書いていきたい」という。一貫して書きたいのは「人が葛藤する姿」。時代を超えたテーマは、執筆への飽くなき欲求につながっている。
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