横浜市教育委員会は8月5日、市立中学校146校が来春から4年間使う歴史と公民の教科書に、前回に引き続き「新しい歴史教科書をつくる会」の流れをくむ育鵬社版を採択した。歴史観の違いで賛否が分かれ、最終的に岡田優子教育長が判断した。審議内容について説明責任を求める声も上がっている。
教科書採択は岡田教育長と5人の委員が、市教科書取扱審議会の答申に基づき協議。無記名投票の結果、歴史は帝国書院と育鵬社が3票ずつ、公民も東京書籍と育鵬社が3票で並び、会議規則により岡田教育長に一任されて決まった。
採択後の記者会見で岡田教育長は「歴史は人物や文化遺産に着目し、生徒の思考力や判断力などの育成をうながす構成となっている」「公民は現代社会の国民の自覚を育み、多面的に物事をとらえられるよう工夫されている」とそれぞれの採択理由を説明した。
中学校の教科書は原則4年に1回、教育委員会が検定教科書から各教科一種類を採用。市では前回から市内全域で共通の教科書が使われる方式となった。育鵬社版の教科書は、全国的にシェアを伸ばす一方、教育の現場からは「愛国心の育成に偏った記述があるので使いにくい」と採択替えを求める声も出ていた。
横浜市は全国最多校の採択地区。この日の定例会には、定員20人に対し391人の傍聴希望者があるなど、大きな注目を集めた。今回採択された教科書は、4年間で約10万8千人が使うことになる。
反対署名23万筆
教科書採択をめぐっては、多くの請願・陳情が寄せられている。市教委によると、今年度は8月26日現在で82件。育鵬社採択の反対を求める署名も23万筆を超えた。
採択やり直しを求める請願を提出した「横浜教科書採択連絡会」の佐藤満喜子さんは「無記名投票では記録が残らない上、どの委員も具体的な会社名を挙げて意見していなかった」と指摘し、「市民への説明責任を果たしていない」と批判している。
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