発達障害の男性が自身の経験を語った「発達障害なんのその、それが僕の生きる道」(東京シューレ出版、1575円)が6月30日に出版された。両親はこれまで2冊の本を出しているが、本人の手記を盛り込んだのはこれが初めてだ。
金沢区富岡西に住む上野康一さん(24)=仮名=が発達障害と診断されたのは、17年前の小学校1年生のとき。当時はまだ発達障害の存在が一般的でなく、学校や周りの認知や理解も低かったという。
康一さんが担当した一章は、本人が過去の経験をパソコンで綴った原稿と、出版社によるインタビューを元にまとめたもの。初めての執筆だったが、「なんとかなる」と考え、前向きに取り組んだという。いじめや不登校、北海道の北星余市高校での貴重な経験、沖縄の専門学校での生活、就職活動、今の仕事についてなど、自らの視点で客観的に表現している。書籍は、前作「わらって話せる、いまだから」にこの手記を加え、改訂新装版として出版された。
母親の景子さんは、この本で始めて知った息子の気持ちがたくさんあったと明かす。「なぜ不登校になったのかとか。中学で、周りとの違いが大きくなり『毎日教室のすみでポツンとしていた』と知り、つらかったんだなあと改めて思いました」。親と息子の認識のズレや、重なる思いが比較でき、「より立体的に読めるのでは」と話す。
「出来ることはちゃんと出来る」
現在、造船会社に勤務している康一さんは、高機能自閉症と診断されている。障害について聞かれると、「見た目は普通ですが、長く付き合えばわかると思います」と説明しているという。読み書きや算数などの学習や相手の気持ちを推察することなどが苦手分野だ。「でも出来ないことばかりではなく、専門的な知識はずば抜けていたりする。こういう人もいるんだって、分かってもらいたい」と訴える。出来ることはちゃんと出来る―。その力強い言葉からは、働くことに誇りをもち、生活している自負が感じられる。
文部科学省が2003年に公表した資料によれば、発達障害を持ち特別支援教育の対象と考えられる児童は、通常学級に6・3%存在しているという。高機能自閉症理解推進グループ「のびのび会」の会長も務め、講演会や親睦会などに力を入れる景子さん。もっと多くの人に発達障害のことを理解してもらおうと、「排除するのではなく、”みんなと違うこと”を受け入れられる社会にしていきたい」と訴えている。
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