パリで活躍した画家・藤田嗣治が生涯愛し手放さなかった藍染筒描を金沢区在住の藍染デザイナー、杉戸裕隆さん(45)=人物風土記で紹介=が再現した。オダギリジョー主演の映画「FOUJITA」の公開に先立ち、岡村の「とんかつ美とんさくらい」で22日から11月14日まで展示される。
ことの発端は1年以上前。映画撮影にあたり、藤田の愛した藍染筒描の制作依頼が、杉戸さんに飛び込んできた。「こんな光栄な仕事、誰にも譲りたくない」。二つ返事で引き受けた。
制作期間はわずか2カ月。資料どころか現物も少ない筒描の制作は苦労の連続だった。「液や糊の加減などが難しく、試行錯誤を繰り返した」と振り返る。ゆがんだ線や稚拙ともいえるフォルム――およそ洗練とは程遠い筒描を「なぜ藤田ほどの人が愛したのか」。杉戸さんの当初の疑問は、制作を進め、藤田の気持ちに寄り添う中で、氷解していく。「異国で暮らす藤田にとって、視覚的に味わう味噌汁だったのだろう」。そんな苦心の末、杉戸版「茶道具」がようやく完成する。
「良いモノは多くの人に」
杉戸さんとさくらいの堀内強美社長(70)を結びつけたのも筒描だった。10年前、杉戸さんの筒描「鯉の滝昇り」を展示会で見た堀内さんが一目ぼれ。「売りたくない」という杉戸さんを、「店には1日200人以上来る。良いモノができたなら、多くの人に見てもらわなきゃ」と2時間かけて説得した。「熱い言葉に気持ちを持っていかれた」と杉戸さん。以来、折に触れ親交を重ねてきた。
堀内さんは「頑張っているから、応援したい。今回協力できたのは、この上ない喜び」と笑顔。期間中、同店では藍染筒描の展示のほか藍染シャツなどの販売も行われる。
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