〈連載〉さすらいヨコハマ⑥ ラジオ関東『昨日の続き』 大衆文化評論家 指田 文夫
1960年のある夜、大学生の兄が家に戻ってくると、いきなり興奮気味にこう言った。
「すごく面白いラジオがある」
午後10時過ぎにラジオのダイヤルをラジオ関東(現・アール・エフ・ラジオ日本)に合わせると「今日の話は昨日の続き、今日の続きはまた明日」と富田恵子の台詞で始まった番組が非常に面白かった。内容はどのようなものだったか思い出せないが、それが日本最初のトーク番組『昨日の続き』だった。
出演者は、富田のほか、毎回男2人、前田武彦、永六輔、大橋巨泉、はかま満緒らで、1950年代末から1971年まで続いた。
音源はないようだが、番組の雰囲気が分かる映画がある。日本最初のロード・ムービーで、1962年に公開された蔵原惟繕監督、山田信夫脚本の傑作『憎いあンちくしょう』である。
元詩人で今は売れっ子タレントの石原裕次郎演じる北大作が担当している番組は『今日の三行広告から』で、新聞の三行広告から面白そうなネタをもとに放送を構成する。映画では「米軍放出の中古ジープを九州の無医村に届けてほしい」という芦川いづみの願いを叶えるため、裕次郎の大作とマネージャーで恋人・榊田典子(テンコ)の浅丘ルリ子は、東京から西日本を縦断して熊本まで行く。この大作のモデルは、実は永六輔だというから意外だ。
先進的な音楽局
そのほか、深夜0時30分から15分間は、季節に合わせた音楽DJで、夏のハワイアンは早津敏彦、秋のラテンを中村とうようなどが担当。ラジオ関東は1958年、野毛山で開局。首都圏最後発だったため、先進的な音楽局で、構成作家には五木寛之、向田邦子らもいた。そして、0時45分から1時までは、ジャズ奏者本多俊之の父、本多俊夫の『ミッドナイト・ジャズ』で、これで私もモダンジャズ少年になったのである。
現在、ラジオ日本の本社は中区長者町にある。
(文中敬称略)
|
|
|
|
|
|