「焼き魚なんて、いつぶりだろう」。そう言いながら、湯気の立つサンマを持って微笑む人たちが印象的だった。
福島県双葉町の町民約7百人が避難する埼玉県加須市旧騎西高校で11月20日、鶴見法人会(長谷川勝一会長)らが炊き出しを行った。
炊き出しは同法人会が企画。「津波だけでなく原発の問題もあり、被害が深刻だと思った」。長谷川会長は双葉町支援の理由を話す。震災後すぐに調整したが、『大人数なら秋に』という町側からの要望もあり、8ヵ月経って実現した。
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当日は、朝6時に鶴見からバス3台で出発。集まったのは会員70人に、町会などから一般参加の区民50人の計120人だ。
用意したのはサンマ700匹、フランクフルト、焼きそば、とん汁が約400人分。手配に奔走した相川副会長は「備品を揃えるのに苦労したが、ほとんどを会員企業で揃えた。来られない人たちの気持ちもこもってる」と話した。
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この日はちょうど、震災で延期となっていた統一地方選挙の投票日。別の避難先から投票に訪れる人もいたため、10時ごろから配り始めた料理は2時間ほどで終了するほど盛況だった。
町民は「本当に有り難い」「ずっとお弁当だから、炭火の焼き魚が美味しかった」などと喜んだ。
同会では今後も支援を継続していく予定。春には避難の子どもたちを募って、八景島へ招待することを計画しているという。
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「早く帰りたいのが一番」。町は未だに警戒区域。井上一芳副町長は、町民の声を代弁するように応えた。
福島第一原発のある双葉町は震災翌日、町役場ごと福島県内の川俣町に避難。その後さいたまアリーナに移り、3月31日から同校で生活を続けている。
井上副町長は「みんな(炊き出しを)楽しみにしていた。120人は今まででも多い方。できることは自分たちでと、がんばっているところだが、やはり嬉しい」と顔をほころばせた。
震災から8ヵ月。復興を思っても、自分たちだけでは前進できない人たちもいることは確かだ。当日は配る側も貰う側も、みんな楽しそうにしていた。長谷川会長は「成功してよかった」と微笑んだ。
「ごちそう様。ありがとう」。帰り際に聞いた言葉が温かかった。(浜田貴也)
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