2010年度から待機児童対策を重点施策として、大幅な認可保育所増設、定員増加に努めてきた横浜市。そしてこの4月、市はついに「待機児童ゼロ」を達成する見通しを立てた。
この「成果」の一方で、児童を受け入れる保育現場ではさまざまな不安の声も聞かれる。その最たるものが保育士不足だ。全国的なこの問題は、横浜市でも例外ではない。
戸塚区内にある認可保育所「ちゃいれっく東戸塚駅前保育園」。新年度に向けて退職者枠を埋める保育士の求人を行っているが、高橋祐也園長は1月中旬時点で「応募が来ない」と不安を声ににじませる。
同園にいる職員26人のうち、15人が正職員、11人は準職員だ。新規園が増えたことで保育士市場は引く手あまただが、労働環境と待遇の厳しさから離職率が高いのが現状だという。「法人として待遇改善に努めてはいるが、業界全体で変わっていく必要がある」と指摘する。
市内で複数の認可保育所を運営する、とある社会福祉法人。毎年新卒採用を行っているが、保育士を希望する学生たちの意識の変化を実感すると理事長は話す。「採用試験の科目が多いと、応募をやめてしまうケースも少なくない。今まで通りにはいかない」。都市部から集まらないため、同法人では地方からの採用を積極的に行い、待遇を上げることで保育士確保に努めているという。
市でも保育士確保を重要課題と位置づけ、09年度から毎年、ハローワークなどと連携し、就労支援講座を行っている。今年度は全6回を企画。参加率は高いものの、実際の就職には結びつきにくいのが現状だ。
経営は綱渡り
保育現場からは市の手法に疑問の声も聞かれる。
市内の認可保育所経営者の一人は「今のシステムでは2月中旬の入所発表間近にならないと、4月入園の児童数の情報が入って来ない。これでは保育士の雇用計画も立てられない」と市への不満を口にする。
保育所経費の約8割を占める人件費。保育士数は児童数に応じて増やすが、今のシステムでは多く保育士を雇用しても園児が定員に満たなかった場合、赤字経営を余儀なくされる。
経営者はさらに危機感を強める。「いずれ児童数が減り、多くの園で定員割れが生じることも予測される。現時点で年齢によっては定員割れが生じている園もあり、経営が厳しくなってくる。保育所整備は簡単に答えが出せないが、せめて市はもっと、園に情報を提供してほしい」―-。
急速な保育所増設は市民に歓迎される一方で、現場が追いつかず、保育の質低下を招きかねない。それは本来あるべき子ども支援ではない。守るべきものは何か―-。保育所整備が一定の目途をつけた今、行政、保育所、市民がもう一度、考える必要がある。
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