鶴見区文化協会主催「オクトーバーコンサート」で仏教音楽の声明(しょうみょう)を披露する 前川 睦生さん 大本山總持寺後堂 64歳
発する声は鍛錬した日常
○…「歌うというより、唱える。あくまで仏道ですから」。区文化協会30周年を記念して開かれるコンサートで、お経に節をつけた仏教音楽「声明」を披露する。曹洞宗の二大本山の一つ、總持寺で、声明の専門家ともされる維那(いのう)という役職を二度にわたり務めるなど、その道で全国に名を馳せる人物だ。
○…父が住職を務めた兵庫県の寺で育った。小学生のころから読経を手伝い、「住職という仕事が好きだった」とほほ笑む。「一緒に風呂に入ったとき、父が声明を口ずさんだんですよ。いい音楽だと思った」。40年ほど前、總持寺の開祖・瑩山禅師の650回忌の際、維那だった父。当時、『声明なら前川』というほど有名だった。20代になり、個人的に依頼して教わった。「体を楽器にして、全身に響かせるのが難しい」。鍛錬を重ね、父の背中に追いついた。
○…教室も持ち、声明ばかりを教えていたとき、「これが本当に仏道修行だろうか」と考えたこともある。「日常と切り離し、歌だけを教えたらカラオケと同じ」。日々修行の中で、毎日していることの一つならば仏道。普段の生活こそ仏法で、日常の作法が宗旨であることを説いた『威儀即仏法 作法是宗旨』。「細部が本質。中身があれば細部がよくなる」。声明もまた、日常に資するためだ。
○…これまで、禅をルーツにもつ能楽や尺八をはじめ、サックスなどとコラボレーションを果たしてきた。2011年には、ドイツでの公演も成功させた。今回出演する尺八奏者のブルース・ヒューバナーさんとは、7年ほど前、さいたま市のイベントで共演したこともある。「今回出演する皆さんも、鍛錬した音楽であり、それは全員一致している」。修行の責任者でもある後堂という役に就く現在、山内の行事で声明を唱えることはできない。「正直、唱えたいときもありますよ」と笑顔で本音も。鍛錬した”音たち”が集まる舞台で、修行の成果を響かせる。
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