神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報紙

  • search
  • LINE
  • MailBan
  • X
  • Facebook
  • RSS
鶴見区版 公開:2017年4月27日 エリアトップへ

田祭り 再興30年 鶴見神社であさって29日

社会

公開:2017年4月27日

  • LINE
  • hatena
1986年、初披露の様子
1986年、初披露の様子

 鶴見神社に鎌倉時代から伝わる民俗芸能「鶴見の田祭り」が、あさって4月29日の開催で再興30年を迎える。途絶えてから一世紀以上、見た人も演じた人もいない状態から、文献などを頼りに多くの区民が携わって復活を果たした田祭り。節目となる今年は、駅前でのイベントや神輿パレードなどが花を添える。延べ約2千人が関わったという復活から30年、その意味を取材した。

鎌倉時代に伝承

 「〽練れ〜練れ〜練れや〜、我前を練れよ〜」と節に合わせて一年の稲作の所作を行う田祭り。西日本を中心に関東付近まで伝えられた民俗芸能で、ほかに田遊び、御田祭りなどとも呼ばれる。年の初めに、豊穣を祈念する神事として各地で行われた。

 鶴見神社には、鎌倉時代に伝わったとされる。氏子の百姓12人が神壽歌(かみほぎうた)という歌に合わせ、春の鍬入れから秋の収穫までの所作を行い、豊作を祈願する。

 それに加え、最後には於鶴と亀蔵という男女が登場し、妊娠などの性教育の役割も担いながら、子孫繁栄の願いも込められた芸能だったという。

国からの廃絶命令

 人々に親しまれ、毎年正月16日に当たり前にあった祭りは、1872年(明治5年)を最後に途絶する。

 鶴見駅横にあり、東海道も走る鶴見神社。同年に日本初の鉄道・新橋―横浜間の開通を控え、欧米人など海外からの往来増加が予測された。

 その立地が災いし、於鶴と亀蔵の演技が欧米人の目に触れることを嫌った国から、廃絶命令が下ったのだという。

 実際、当時田園の中にあったという東京都板橋区徳丸の北野神社、赤塚の諏訪神社に伝わる同形式の田遊びは、このとき廃絶していない。

始まりは古老の一言

 「昔、ネエレンマツリと呼ばれる農耕の祭りがあったんだよ」

 途絶えてから約80年、学生だった金子元重宮司が、近所に住む古老から聞いたこの一言が、田祭り復活へのきっかけだった。

 古老からの話を聞いた翌年、金子元重宮司は、戦争で中断していた板橋の2社の田遊びが再開されることを新聞記事で知る。

 「駅からはずっと麦畑が続いていた」。カメラを携え訪れた2社で初めて見た田遊びに心弾ませた。このとき、徳丸の古老からは、ここの田遊びは鶴見から伝わったものだと教えられ、「いつの日か復活を」と希望を抱いたという。

 金子宮司は、「この日、現地で偶然にも、東京国立文化財研究所の調査で来ていた三隅治雄氏に出会った。これもその後の奇跡につながった」と話す。

一世紀を超え復活

鶴見神社「田祭り」『千草』の発見

 復活の最初の壁は、1911年に起きた鶴見の大火だった。旧家を訪ね、古文書を求めても、ほとんどが大火で燃えており、手がかりは見つからなかった。

 資料集めも忘れかけた69年、金子宮司は四代目の父の跡を継ぐ。その折、三代宮司・黒川荘三の孫娘に会う機会があり、黒川荘三が幕末から明治の鶴見の様子を書いた『千草』という手記が存在することを聞いた。

 千草を探し始め、大阪に住む黒川荘三の孫養子にあたる黒川宗進氏にも会った。当初、宗進氏も古いことで記憶になかったが、75年ごろ、ついに物置から千草を発見。本の中には、田祭りの詳細があった。

歴史の会ら尽力

 田祭り復活にあたり尽力したのは、鶴見歴史の会だった。83年、鶴見神社で総会が開かれた際、金子宮司が田祭りの復活を依頼。同会は田祭り研究部会を立ち上げ、取り組みを開始した。

 この部会で復活に携わった鈴木富雄さんは「他の地域の田遊びは知っていたが、鶴見にもあったのはみんな知らなかった。それならばと団結した」と依頼を受けた様子を語る。

 すでに途絶から一世紀、見た人も聞いた人もいない。崩し字で書かれた千草の解読作業から始め、使われている道具や一連の流れを読み解いた。最も困難だったのは、節回しや所作。「今なら音源があるが一切ない。字ではわからず、迷った」と鈴木さん。現存する各地の田遊びを見て回った。

 こうした難問などにアドバイスをしたのが、民俗芸能の第一人者となっていた三隅治雄氏だった。

 研究開始から約3年後の86年、第7回鶴見区文化祭で初披露され、翌87年、鶴見神社で復活を果たした。幾重にも重なる偶然がもたらした115年ぶりの奇跡の瞬間だった。

「重文に肩並べる」

 口承伝承が多い民俗芸能の中で、文献が残っているのは珍しいという。三隅氏は「鶴見は文学的にも素晴らしい。克明に調査し、きちんと復元している」と評価。「復活から30年でさらに内容豊かなものになった」とした上で、「国の重要文化財である板橋の2社に肩を並べるもの」と話した。

 「すべてが幸運の連続。大勢の人たちに恵まれ、助けられた結果」と金子宮司。現代の鶴見からは想像もできない、稲作の時代を描く民俗芸能「鶴見の田祭り」。今年は4月29日、午後4時〜6時半ごろまで、鶴見神社境内で執り行われる。

正午〜記念企画も

 節目の今回は、区制90周年記念イベントとしても実施。正午から、JR鶴見駅東口周辺には、ミニ機関車などのキッズランドを設置。鶴見神社には模擬店が出店し、両会場とも和太鼓や大道芸などのステージも披露される。また午後6時半からは、氏子青年会らによる万灯神輿4基のパレードも。駅前から神社まで、迫力の渡御が楽しめる。
 

於鶴と亀蔵(86年初披露時)
於鶴と亀蔵(86年初披露時)

鶴見区版のトップニュース最新6

創立100周年で式典

鶴見大学附属中学校・高等学校

創立100周年で式典

更なる飛躍へ建学の精神継ぐ

11月21日

新制服を地元学生に依頼

東宝タクシー

新制服を地元学生に依頼

服飾専門学校のYFDが協力

11月21日

絵本大会で全国5位入賞

新鶴見小5年松山さん

絵本大会で全国5位入賞

犬を飼える家の夢を作品に

11月14日

不審な訪問が増加

不審な訪問が増加

市水道局が注意喚起

11月14日

学園祭で商店街をPR

横浜商科大学つるみキャンパス

学園祭で商店街をPR

学生が生麦の商店主らと協力

11月7日

DXで搬送時間を短縮へ

市消防局

DXで搬送時間を短縮へ

実証事業で早期整備めざす

11月7日

意見広告・議会報告政治の村

あっとほーむデスク

  • 7月14日0:00更新

  • 7月7日0:00更新

  • 4月7日0:00更新

鶴見区版のあっとほーむデスク一覧へ

イベント一覧へ

コラム一覧へ

鶴見区版のコラム一覧へ

バックナンバー最新号:2024年11月22日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook