連載寄稿 イルカ博士の生命感動日記 【12】赤ちゃんが人を助ける
イルカの赤ちゃんは、生まれたらすぐに母親のマネをして生きる術を覚えます。他のイルカがエサを取るのに困っていたら手助けをします。人間の赤ちゃんはいつ頃、困った人を見て助けるという素直な動作が芽生えるのでしょうか。
つい最近、赤ちゃんの手助け行動の実験結果が発表されました。1歳半の赤ちゃんが洗濯バサミを落した大人を見て拾い上げるなど、様々な実験をしたそうです。しかも、赤ちゃんは全く知らない人にも喜んで助けました。実験ではチンパンジーよりもヒトの赤ちゃんの方が、はるかに早くサポートしたそうです。
これらのことから、ヒトの赤ちゃんが他人を助けるという動作は、もって生まれた生得性・感性の一つで、18カ月で完成されたと報告されました。チンパンジーやイルカより、ヒトの赤ちゃんの方が人を助けるために何をすればよいかを理解できるようです。これを「利他主義的」ともいいます。
私たち大人は、生きる社会が論理の世界なので、理屈が重要です。ヒトが進化の過程で先祖から善く生きようとして得た生得性・利他主義も、単なる道具や言い訳としてしか見ないように教育されて成長するので、論理で説明したくなります。つまり、他人は論理的に学習や練習を優先します。子どもは単純にそれらに従いさえすれば、他と同様に必ず「いい子」になっていくと錯覚するのです。
0歳からの子育てには、子どもが自分から他を捉えて自分で動作するという「無意識・無努力の感性」を出しやすいように、論理や理屈ではない「生物学から見た教育」が必要です。
【日本ウエルネススポーツ大学特任教授・岩重慶一
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