寄付により自治体を応援する「ふるさと納税」で、横浜市は昨年、控除額が一昨年比3倍超となり、推計約5億円を他自治体に流出したことがわかった。市は、各自治体が導入している特産品返礼を行っておらず、市財源課担当者は「減収という事態は重く受け止めるが、お土産導入の予定はない」と話す。
ふるさと納税は、好きな自治体(在住自治体含む)を応援するため、2008年に国が創設した寄付制度。自己負担2千円を超える部分が所得税と住民税から一定上限まで控除される仕組みだ。自治体によっては近年、PRとして寄付者に地元の特産品などを贈っており、全国的に寄付者が増えている。
背景に土産競争
横浜市が、市民を含む全国の人々から昨年度に受けた寄付額は6400万円。一方、ふるさと納税を活用した市民に対する昨年分の控除額は、5億7千万円に上る。控除額には市民が市へ寄付した分も含まれるが、単純に差引約5億円が減収した計算だ。
市は、寄付額については、1億円などの大口寄付によって左右されると分析。実際、一昨年は1億円の寄付があり、寄付額は1億4千万円だった。控除額については、東日本大震災後の11年に5億8600万円と急増。その後一旦縮小し、昨年再び5億円を突破した。市民の制度利用者が増加傾向にあるとし、背景に「お土産競争の過熱がある」との見解を示す。
本来趣旨貫く
市財源課によると、現在実施していない特産品などの返礼は、今後も行わない方針だという。「制度は本来、事業の魅力を理解してもらい、自治体を応援してもらうもの。お土産は必ずしも必要ではない」と担当者は説明する。
市のふるさと納税は、「横浜サポーターズ寄付金」と名付けられ、青少年健全育成や環境保全、社会福祉など、使途希望のない市政全般を含め9つの事業に対する寄付を募る形だ。寄付者に対しては、事業報告書などを送付している。
過熱する返礼品については、今年4月、総務省が高額品の自粛を通知しているが、県内では鎌倉市や茅ヶ崎市、横須賀市などが今年度から特産品返礼を導入。茅ヶ崎市は開始5日間で前年比4倍の寄付を集めた。
市は、認知度を上げるため引き続き努力するとし、対策としてホームページのリニューアルなど、地道な広報活動で打開していく考えを示している。
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