約10年前から国有地として民間への払い下げが検討されていた久地2丁目の通称「かすみ提」について、国土交通省は同地を売却せずに地域の防災・減災を図るために河川区域に再編入すると発表した。この決定により、同地は将来にわたって国が所有し、河川として保全されることとなった。今後は地元や川崎市、京浜河川事務所が同地の利活用について協議をしていく。
今回の突然とも言える国土交通省の発表を受け、地元の久地第二町会(栗田栄治会長)および同町内で保全に向けて活動を続けてきた「『かすみ提』を保存する会」(久郷則男代表=人物風土記で紹介)では驚きと喜びの声があがっている。
「かすみ提」は江戸時代中期に築造されたとされ、春には見事な桜並木が広がるなど地域住民の憩いの場として親しまれてきた。国土交通省から民間への払い下げ話が持ち上がったのは2007年。その通告を受け久地第二町会では同地を市が買い取って防災緑道公園とするよう運動を開始。区内議員も賛同して市議会でこれまで2度の請願を全会一致で採択。市も取得を検討してきたが、約8億円とされる高額な費用がネックとなって進展しなかった。
しかし、その後も市や保存する会は国交省と粘り強く交渉を続けてきた。今回の発表を受け、栗田会長は「地元住民の悲願が叶って何よりも嬉しい。今年の桜祭りはお祝いだ」と喜びを語り、久郷代表は「今後も国や市、区と協議して、『かすみ提』を有効活用する方法を一緒に考えていきたい」と話した。
気象変動が変更の要因
国交省が売却の方針を変更し、「かすみ提」を河川区域として保全することを決めた背景には、近年の温暖化の影響による気象変動で、今後も豪雨による水害の頻発や激甚化が想定されることがある。
昔は洪水が絶えず「あばれ川」として知られた多摩川で「かすみ提」も治水を目的に造られた。同地を管理する京浜河川事務所では「万が一の水害時に堤防として下流地域の被害軽減につながると期待する。今後の利活用は地元や市からの要望を受けて相談していきたい」としている。
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