川崎市アートセンター5周年記念として上映される映画『39窃盗団』の監督を務める 押田 興将さん 町田市在住 43歳
「生きる姿」重喜劇で焙り出す
○…映画プロデューサーとして活躍する傍ら、自主映画の制作にも意欲的に取り組む。初めてメガホンを取った『39窃盗団』では、新百合ヶ丘周辺を舞台に、ダウン症の実弟の姿をユーモラスに描いた。心神喪失者を罰さないことを定めた刑法39条を楯に、捕まるはずのない窃盗団を結成した兄弟の喜劇。ざっくりとした大軸を決め、実弟を含む役者がアドリブで物語を形成していく方法をとった。「障害は重いテーマ。観客が感情移入しすぎず、様々な問題を客観的に見られるようにするためにも、ユーモアが必要だった」
○…1969年、横浜市に生まれ栃木県で育った。高校を中退し、人生に迷う最中、映画監督になることをふと思いついた。漠然とした思いを抱き、飛び込んだ映画の世界。日本映画学校で学び、故今村昌平監督や、武重邦夫監督に師事した。社会的に重いテーマにとびきりの笑いを交え真理を焙り出す「重喜劇」を確立した今村監督のもとで、映画を通じた「人間研究」の日々が続いた。構想20年、弟を撮ろうと模索した道の果てにたどり着いたのはやはり「重喜劇」だった。
○…川崎が誇る映画祭として定着した「KAWASAKIしんゆり映画祭」の創設メンバーとして名を連ねる。「映画を愛し、映画を見続ける”土壌”を育てるのも映画人の仕事」という武重氏の言葉の通り、市民ボランティアたちとイベントの立ち上げに奔走した。「ここで色々な人と出会った。映画が完成したのも、そうした人たちのおかげ」
○…商業映画の製作に携わる身であるからこそ、自主映画の存在に強く惹かれ、可能性を感じている。「低予算な分、自由の幅も広い自主映画だからこそ表現できるリアルがある。そうして映画を作ってきた人たちも今や商業ベースで製作している時代。本当の意味でのアンダーグラウンド作品の存在意義を確保していくことができれば。それが自分の責務かもしれない」
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11月22日