自身の持つ知識や技術、経験を開発途上国に赴き、伝えたい-。
区内在住の看護師・北畠さおりさん(29)は、2012年9月から14年9月までの2年間、開発途上国に対して技術協力や開発資金援助などを行うJICA(独立行政法人国際協力機構)のボランティア事業「青年海外協力隊」として中米のニカラグアに滞在した。北畠さんは現地の人々とともに奔走した2年間を振り返った。
幼い頃から世界の文化や社会情勢に興味があり、「世界のために働きたい」と思っていた北畠さんは、アメリカの大学で保健や福祉について学び、看護師の免許を所得。大学卒業後に帰国し、日本の看護師の免許を取得するため国家試験を受け、看護師として2年働いた後、海外に行こうと決めていたという。そんな中、ニカラグアで感染症の予防・啓発活動のボランティアを行う「青年海外協力隊」の募集を見つけ、自身の知識や経験を生かそうと応募。看護師は3年働いて一人前と言われるため、周囲から反対の声もあったが決意はゆるがず、JICAの選考を経て、現地に赴くことが決まった。
同国では、日本でも問題になったデング熱や、サシガメと呼ばれる昆虫を媒介して感染し、発熱や頭痛を伴うシャーガス病などの感染症が社会問題となっていた。しかし、現地では感染症の存在自体を知らない人が大半で、感染症は軽視されていた。そこで北畠さんは、現地の保健省の職員らとともに子どもから高齢者まで様々な人を対象に、学校や保健センターで周知を目的とした授業を実施。同時に、サシガメの住処となる壊れた住宅の土壁の修復作業の支援も行なった。はじめは、感染症の予防・啓発活動に対して消極的だった職員らも、北畠さんとともに活動するうちに、自発的に動くようになったという。「『自分たちでも何かできるかも』という意識を芽生えさせることができたことが一番の成果」と2年間を笑顔で振り返った。
北畠さんは「海外に出ていくことで、自分が当たり前だと思っていることがそうではないことを実感する。良い意味でも悪い意味でもカルチャーショックを受け、国際的視野が広がった。世界で起きていることが他人事に思えなくなった」とこれまでの経験を振り返る。その上で、協力隊として2年間活動したことで、世界中の人とチームをつくり、問題を解決することにやりがいを感じるようになり、より「世界のために働きたい」という思いが強まったという。今後はWHO(世界保健機関)などの国際機関で開発途上国の支援をしたいとの思いから、専門的知識を身に付けるため、アメリカの大学院に留学する予定。バイタリティ溢れる世界への挑戦はまだまだ続く。
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