米・ニューヨークで展覧会を開催する新進気鋭の画家 楯 とおるさん 南区南台在住 26歳
「温かな青」 7月、NYデビュー
○…砂とアクリル絵の具で描き出す心象風景は、見る者を幻想的な世界へ誘う。特に「温かくやさしい青」と評される色彩は、今や自身の代名詞に。昨年、若手作家対象公募展での入選や、最優秀賞受賞を重ね、飛躍の機会を得た。現在は、さいたま市の百貨店で個展を開催中。今回は公募展入選者10名の中から、ただ一人、個展のオファーを獲得。来月は、初の海外展覧会(ニューヨーク)を控える。
○…横浜の美大を卒業して4年。進学時は「ひとまず基礎を」と選んだ絵画専攻だったが、ある時、ある巨匠の絵に触発された。「自分も、平面だけの世界で、どこまで表現できるかやってみよう」。以来、描く時間を最優先し、「就職しない」道を選んだ。居酒屋にベッドの工場、パチンコ店、電子マネーのデータ管理、引越し業者など、雑多なアルバイトで生活費を捻出。卒業制作を機に知り合ったギャラリーの勉強会に通い、創作活動を続けてきた。
○…少年時代は、自分から進んで何かをやりたいというタイプではなかったそう。中学生の時は、友達に誘われて野球部に。「万年補欠でした」と笑うが、最後までやりぬいたことは、「よくがんばったと今でも思う」。一方、好きだった美術の授業では、「確か、自分より上手な同級生がいて、挫折感を味わったような」。以来、漫画やアニメに関心があったものの、それを周囲には明かさずにいた。美大志望は、両親に初めて示した自分の意思だった。
○…昨年からは、念願だった”絵筆一本”の生活に。「大家さんがすごくいい人で、家賃を待ってもらうことも。いろんな人に支えられて、何とかやっています」と照れ笑い。とはいえ、いまや作品にはコレクターもつき始め、依頼を受けて制作することもある。卒業時に泣いて反対、しばらく連絡をとらずにいた両親も、認め始めてくれたそう。「もっと多くの人の目に触れられたい」。物語は、まだ始まったばかりだ。
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