杏林大学総合政策学部(宮下町)の学生が、江戸時代に宿場町として栄えた八王子に再びその賑わいを取り戻そうと活動をしている。アジアから訪れる旅行客が観光コースの中で「八王子に1泊する」実態を突き止め、その時間に街を利用してもらう施策を考案。取り組みは6月にNHKでも紹介された。
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活動をしているのは同学部の久野新(あらた)准教授のゼミナールに所属する22人。彼らは昨年12月、第6回大学コンソーシアム八王子学生発表会で「宿場町八王子再生構想」を石森孝志(たかゆき)市長に提案し、最優秀賞を受賞した。
現代版「外国人向け」
プロジェクトのスタートは昨年の夏。アジア経済を専門とする久野准教授のゼミでは、昨今インバウンド(訪日外国人旅行)による「爆買」などが増えている背景から、キャンパスのある八王子市内でのその実態を調べることにした。「八王子を訪れる外国人観光客のほとんどが高尾山目当て、というのが従来の認識でした」(久野准教授)。ところが調べていく中で、八王子はアジアからツアーでやってくる観光客の宿泊地の一つとして利用されていることがわかってきた。「彼らには東京〜富士山、あるいは東京〜関西という観光のゴールデンルートがあり、その中間地として八王子が選ばれていました」。地理的なメリットだけでなく、都心より宿泊の予約がしやすく、また安価であるのもポイントという。
地元店使って
ただし、外国人旅行客が八王子で過ごす時間は夜から朝まで。買い物にでかけるとしても、大型ディスカウント店やドラッグストア。地元の店舗が利用されることはほとんどない事実もわかった。
そのような状況の中、ゼミでは6月、駅前で行われるグルメイベントと協力し実際に「八王子の商店街、飲食店を利用してもらう」PRを行うことにした。活動に参加した「バルベリー八王子」(同実行委員会主催)は、駅周辺飲食店を対象とした4日間の食べ飲み歩きイベント。学生は外国人向けに、中国語、英語でチラシを作り、イベント期間、バスから降りてくる観光客に案内をした。同大学の留学生も学部横断的に翻訳や通訳などで活躍した。
ゼミでは6月18日、このイベントを通じて見えた課題などを八王子市へ報告した。今後は行政と協力し、外国人が欲する情報を掲載した「八王子中心市街地のマップ」、言葉が通じなくても意思を伝えられるような「指さし会話帳」の作成などを検討している。
ゼミ所属学生のコメント▼「この取り組みは自分の国のためになること。日中観光の橋渡しをしたい」(2年・留学生・徐仇さん)▼「八王子がかつて宿場町だったことを知らなかった。自分たちの力で取り組みを成功させたい」(2年・馬場菜摘さん)▼「中国では大学が街とつながるプロジェクトはあまりない。有意義な活動」(2年・留学生・丁秋雨さん)▼「外国人は買い物をするとき『うまく欲しいものを伝えられない』そう。八王子に来たら安心して過ごせるようになれば」(2年・樫野功輝さん)▼「外国人に良いサービスを提供できるよう、必要なものをまとめたい」(3年・西條勇さん)▼「他の街でも八王子のような状況になっていないか、リサーチしたい。八王子が(外国人旅行客に対する宿泊ビジネスの)モデルとなれればいい」(3年・三浦貴将さん)
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