森にとって必要でありながら、ビジネスとしては成り立たちにくくなってきた間伐事業。そんな中、「森をフィールドに、人と人の輪をつなぐ活動がしたい」という思いから今年の2月に森と踊る株式会社(元横山町)を有志で設立し、新たな試みをスタート。間伐体験会の開催や自然回帰という価値観の共有で新しい可能性を模索している。
「山は八王子が持っている一番の財産なんです」。そう話すのは代表の三木一弥さん。間伐は森にとって必要なこと。「杉のように高い位置に枝を伸ばす木が密集していると、地面まで日光が届かず、植物の多様性は失われる。遠くから見ると緑で一杯ですが、その足元には生き物の気配がない『緑の砂漠』と呼ばれる状態になります」
放置された山々
現在、林業業界では木を切り出して売るという従来のビジネスは成立しなくなっていきている。戦後、復興に合わせて住宅用に大量の木材が必要となり、国の政策で杉やヒノキなど成長が早くて木材として利用価値の高い木が植えられるようになった。しかし、1964年には木材輸入が完全に自由化され、その後は円高が進んだために国産材の伐採や搬出の費用を回収することは難しくなった。適度な伐採は木の密度を下げて森の維持管理も同時に兼ねていたが、林業の衰退とともに山は放置されるようになった。
その現状を改善していこうと、同社では国産材に「森林再生」という付加価値をつける。自然回帰へと意識が高まる流れもある中、間伐した国産材は自然派のカフェなどで需要があるという。同社では店舗や社屋の内装工事を仕上げるまで一貫して行っている。森林での間伐体験イベントや企業の幹部研修といった自然を使った事業も展開している。
脱サラしてキコリに
三木さんが林業を始めたのは2年半ほど前。元々、自然が好きで間伐の体験会に参加したとき「木を倒した感触」が忘れられず「キコリになろう」と思った。約20年務めた会社を辞めて行政が開催している林業の就業支援講座に通った。そこで知ったのは「雇用先はほとんどない」という現実。それでも山のことが頭から離れずキコリとして起業した。
しかし、そもそも山を持っていない。知り合い100人以上に声をかけて、応じた1人が現在は役員として三木さんと一緒に活動する村上右次さん。自身が経営する不動産業で管理している山の間伐を依頼したことをきっかけに三木さんの考えに惹かれた。村上さんは「日本の森をどうにかしたい」という気概を感じ、どんどん引き込まれていったという。
会社として運営の手応えを感じたのは昨年。奥多摩の山で有志が集まり間伐のイベントを行ったときだ。有料の企画に100人以上が参加した。NPOではなく、ビジネスとして行うことで収益をあげて継続的に活動していくことが可能になる。また、事業が成功することで、全国でも同様の企業が立ち上がれば森林再生にも弾みがつく。「森はまだまだ可能性を秘めている」
恩方中学校(上恩方町)北側の山の一部は、昨年間伐の準備として樹皮をはぎとって立ち枯れの状態にした木がいくつかある。葉が落ちて日光が差し込むようになった地面は、植物の多様性を育む準備をしている。「来年には野イチゴやタラの芽などが芽吹くはず」と三木さんは笑顔を浮かべる。
5月15日にイベント
5月15日(日)には高尾の山で体験会がある。木の皮をはいで間伐をする。参加費は大人3000円。小中高500円。小学生未満無料。午前10時30分から午後3時30分頃まで。午前9時30分に高尾駅北口集合。問い合わせは村上さん(【携帯電話】090・2563・3356)へ。
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