高尾山とんとんむかし語り部の会(吉田美江会長=絹ヶ丘在住)が初めての書籍を発表する。市内に伝わる昔話を一冊にまとめた。7月、揺籃社(ようらんしゃ)(追分町)から発売される。吉田さんは「これを機会に語り部になろうとする人が1人でも生まれれば」と期待を寄せる。
会は民俗学を研究していた児童文学者、故菊地正さん(当時市内在住・2006年没)が02年に、高尾山不動院で創設した。当時、語り部と呼ばれる人の存在は皆無で、菊地さんは「自分たちが育てないと、いなくなってしまう」と危惧し、語り部を育成する講座を開き、会を始めた。
千話の中から50点
会には現在、50代から80代までの男女20人が所属。それぞれが市内の保育園や小学校、高齢者施設などで「語り部」として活躍している。語るのは「八王子に伝わる昔話」に限定している。
活動を続ける中で吉田さんらは、聴いた人から「この話はどの本に書いてあるのですか?」とたずねられることが増えていったそう。しかし昔話は本来、口頭で語り継いでいくもの。吉田さんは「でももしかしたら本があれば(誰かが)子どもに聴かせることができるのでは」ときっかけを作るためにも一冊にまとめることにした。
編集には2年ほどかかった。八王子の昔話はわかっているだけで1000話以上があるという。その中から「天狗笑い」(高尾)「華川(はなかわ)のなき地蔵」(泉町)「石芋」(川口川、大栗川流域)など語り部が伝えてきたものを今回50数点集めた。
八王子地域の昔話は多くが「武州弁」で伝えられてきた。吉田さんによると武州弁は「粗野だが素朴でどこか親しみのわく話言葉(はなしことば)」という。
「武州弁残したい」
しかしその語りは明治時代の教育制度の確立により継承が途絶えてしまうことが多かったそう。菊地さんには武州弁を話す人たちから直接昔話を聞いた貴重な経験があった。菊地さんは「武州弁を残したい」という思いも強かった。「書籍の中のお話しは武州弁と言われる言葉づかいで書くようにしました」(吉田さん)
吉田さんは「『八王子の昔話は歴史の財産、宝物』と菊地さんがよく言っていました。昔話は『自分が住んでいるところで起こってきたこと』『人々は支えあい生活してきたこと』などを教えてくれるもの。本を通して親子の触れ合いを深めてもらえれば」と話す。「1人でもいいので語り部が育ってくれればいいですね」とも。
なお語り部と呼ばれるようになる条件について吉田さんは「30話くらい話せるようになれば」と説明する。しかしただ話を記憶すればいいわけでなく、その話の背景などを理解する必要もあるという。「八王子のことが大好きであることも大切です」。会の活動、書籍「とんとんむかし」についての問い合わせは吉田さん【電話】042・635・5951へ。
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