今年、新たに約1072人の小学1年生が誕生した多摩市で現在、市内の一部の小学校、幼稚園、保育園が連携して「多摩市たまっこ5歳児かがやきプログラム」に取り組んでいる。このプログラムは、入学後に無理なく学校生活が送れるよう、5歳時点で身につけたいソーシャルスキルトレーニングを行うという試み。各機関が連携してこうした取り組みを行うのは全国でも珍しいという。
2009年に東京都教育委員会が公立小学校を対象に「小学1年生の児童の実態調査」を行った結果、「授業中、勝手に教室の中を立ち歩いたり、教室の外へ出ていく」「担任の指示通りに行動しない」などの「不適応状況の発生」が全体の約25%を占めた。発生時期は4月が半数以上で、原因として「児童に耐性が身についていなかった」「基本的な習慣が身についていなかった」などが挙がったという。
その結果を受けて、多摩市では同年、市教委研究奨励校として市立南鶴牧小学校で集団適応能力や社会性の向上に焦点をあてたソーシャルスキルトレーニング「かがやきプログラム」を作成。入学後の児童の混乱を予防し、学習に向かう姿勢、生活の仕方等を指導するもので、現在は一部の小学校で入学直後から同プログラムを採用する他、それ以外の学校でも同様の取り組みを行っている。
一方、入学前に子どもたちを受け入れる幼稚園・保育園では「遊び」を通じて子どもの年齢や発達に合わせた指導を実践。ほとんどの子どもが着替えや挨拶などができている状態にある中で、入学後に「挨拶ができない」「休み時間の間に着替えができない」といった状況があることに触れる機会がなかったという。
7項目を一斉指導
そうした経緯から、入学後、児童たちが無理なく学校生活に入れるようにと、一部の小学校、幼稚園、保育園と市で、2013年度に「多摩市たまっこ5歳児かがやきプログラム作成委員会」を発足。小学生向けの「かがやきプログラム」をアレンジし、”5歳児に身につけさせたい力”として「よい姿勢」「声のものさし」「話しの聞き方」「ありがとう」「ごめんね」「指されてから答える」「最後まで聞く」の7項目を一斉指導するプログラムを作成した。
「私立こころ保育園」「私立おだ認定こども園」「市立貝取保育園」をモデル園にプログラムを実践し、南鶴牧、西落合、貝取の3小学校で入学後の様子を検証した結果、概ね良好で、褒めることが増えたことで子どもとの関係性も良いと感じることが多かったという。その結果を受けて、14年度から3幼稚園、10保育園が採用し、現在も取り組みを進めている。
地域一体で子育てを
今年1月には、同プログラムの検証結果を公開するシンポジウムを小学校、幼稚園、保育園関係者を対象に開催したところ、市内の多くの関係者が参加、理解を示したという。貝取保育園の田坂清子園長は「これまで小学校、幼稚園、保育園が連携することが少なく、お互い知らないことだらけだった。こうして集まって意見交換を行うことができたのは有意義」と話す。加えて「保護者の方々も小学校入学に向けていろいろと不安を抱えている部分もある中で、このプログラムが良い方向に進めば」と話す。
同委員会では今後、プログラムを発展させ、広く発信することで全市的な取り組みにしていきたい意向だ。また意見交換の場として連絡会の発足も視野に入れる。田坂園長は「これを契機にして、小学校、幼稚園、保育園のみんながつながり、安心して子育てができる地域になっていければ」と意欲をみせている。
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