絶滅危惧種に指定されているカモメ科の渡り鳥「コアジサシ」が、社家の取水管理事務所付近にある相模川の人工中洲へ飛来している。2002年ごろ、この中洲には700羽近くの飛来があったが、その後飛来数が急減。2013年ごろから再び見られるようになり、今年は5月22日の時点で12羽が確認されるなど回復傾向が見られる一方、関係者らに積極的な保護の動きが見られない状況が続いている。
コアジサシは毎年4月頃、繁殖のためにオーストラリアなどから日本に飛来してくる渡り鳥。日本でヒナを育て、9月頃にオーストラリアに向かって再び飛び立つとされている。近年は全国的に飛来数が減り、国のレッドデータブックの絶滅危惧種II類に指定されている。
市内を流れる相模川の人工中洲への飛来は1997年ごろから増え始め、一時は700羽近くの飛来が確認されたが、その後飛来数が年々減少。営巣やふ化、巣立ちのない年も続いた。
2013年から再びその姿が見られるようになり、中洲を所管する社家取水管理事務所によると、今年は5月22日に12羽を確認。しかし、5月25日には姿を消していた。その3日後の5月28日には、(公財)日本鳥類保護連盟の専門委員を務める坂本堅五さん(今里在住)がつがいの2羽を確認。卵を雌雄で抱卵している姿が見られたという。
坂本さんは「コアジサシのヒナを狙うカラスやチョウゲンボウなど、天敵の影響で姿を消したのではないか」と分析する。再び戻ってきたことについては「営巣地を探す中で、しばらくしてから一度離れた場所に戻ってくることもある」と話していた。
しかし、相模川に飛来しているコアジサシを積極的に保護しようとする動きは行政側には乏しく、前出の取水管理事務所でも”人工中洲は相模大堰周辺の土砂を移動させるための場所”と定義づけているなど、コアジサシの生息場所としてふさわしい環境整備には程遠い状況となっている。
近隣エリアでは成功例も
一方、県内の飛来地としては、酒匂川(小田原市)も知られている。この川でもピーク時には700羽近い飛来が確認されたが、その後は減少の一途を辿ってきた。また、営巣をしても、天敵の影響などでヒナが巣立ちを迎えられない年が続いた。
こうした事態を受け、小田原市では2013年に行政が主体となり、酒匂川上流の中洲にカラス除けのトラップを設置。その結果、天敵の影響を受けることなく、同年には18羽、翌年には12羽のヒナが巣立ちを迎えるなど、回復の兆しをっ見せている。
この酒匂川での成功例を参考に「相模川でも環境保全に力を入れるべき」といった声も一部にあり、今後の対応が期待される。
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