自らの「3・11」 写真で 宮城出身の工芸大生が展示
高校2年生のときに東日本大震災を経験した宮城県出身の東京工芸大学写真学科の学生、武川(むかわ)健太さん(2年)が同大学中央図書館(厚木市飯山1583)で写真展「僕らが、写真でできること。」を開催中だ。
写真展では、気仙沼市や南三陸町志津川、女川町で約3年にわたって撮影した写真17点を展示している。倒壊した建物や焼けてしまった線路など、被害の大きさを物語るものから、水たまりに花束が添えられ、復興を目指す姿を捉えた一枚などが飾られている。
武川さんが写真家を志したのは、中学2年生のときにテレビで鉄道写真家の作品をみたこと。その瞬間に衝撃を受け、自分も人に普段は気づかない驚きや発見を伝えたいと感じたという。すぐに小学生の頃から貯めてきたおこづかいを全額使い、一眼レフカメラを購入。写真家を目指し独学で撮影を始めた。被写体は子どもの頃から好きだった鉄道だ。
そんなときに”あの日”がやってきた。2011年3月11日午後2時46分、武川さんは仙台市内の高校にいた。突然の揺れに戸惑い、近くの小学校に避難。一夜を明かした。何が起きたのかを知ったのは、翌日の朝刊。建物は倒れ、道路は隆起し、街は一変した。
この日を境に武川さんの価値観は変わった。初めて鉄道以外のものにカメラを向けていた。
ファインダー越しに見た”故郷”は、目に焼き付き、恐怖心が募った。それでも何かに突き動かされるようにシャッターを切り続けた。「これまで写真は温かな気持ちにできるものと思っていたけれど、違った。撮った写真を見返すことができなかった」と振り返る。
撮ることに罪悪感を覚えたこともあったが、ボランティア活動を続けて多くの人々と話を交わす中で、ようやく写真を見られるようになったという。震災から1年以上が経過していた。「写真の本質は、忠実に残すこと。皆を笑顔にしようなんてしなくていい。誠意を込めて写した写真は正直で、語りかけることができる」
今後も撮影を続けると同時に撮影技術を磨き、故郷に恩返しをしたいと話す。
今回の展示は、被災地復興に関する活動報告をする図書館イベントの一環。イベント名の「僕ら」には、自分だけでなく見た人も一緒に被災地のためにできることを考えて欲しいという想いを込めている。武川さんは「忘れないことが大切。多くの人にみていただければ」と来場を呼びかけた。
期間は4月25日(金)まで、会場は同図書館3階の展示スペース。誰でも見学できる。午前9時10分から午後5時(4月10日(木)以降は同7時半)まで、入場無料。日曜・祝日は休館。
問合せは同図書館【電話】046・242・9501へ。
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12月13日