ミシシッピアカミミガメなどの外来種生物により湧水環境が著しく破壊された、東成瀬の湧水池を本来の姿に戻そうという取り組みが、向上高校生物部の生徒と池を管理する石田子安神社の役員たちによって進められている。今月でスタートから1年を迎えたこの取り組み。きっかけは生物部員の探求心と地元への愛着だった。
湧水池は伊志田高校の西側、徒歩3分ほどの所にあり、石田子安神社が管理する。200年以上の歴史をもち、かつては水草が生え、多様な生物が共存した。池には水神様が祭られており、毎年7月に水神祭も行われている。
昨年6月。生物部の小菅桃子さん(2年)は、通学途中にいつも眺めていた湧水池で、たくさんのカメが甲羅干しをしている姿に「なぜ」と疑問を抱いた。
小菅さんは自らリーダーとなってさっそく部内で生物調査を開始した。すると、湧水池には外来種生物に指定されているミシシッピアカミミガメやコイが大量に投棄されていることが判明。また、外来種生物の繁殖により、水草や水生昆虫がまったく見られず、水質環境が著しく破壊されていることも分かった。
そこで、小菅さんたちは「歴史ある伊勢原の湧水環境を回復させよう」と決意。昨年8月からカメやコイの撤去作業のほか、水草の植え付けなどを行った。
今年6月には、石田子安神社の役員の協力により池の中に井戸が掘られた。これにより、湧水池の水量が安定し、植物や生物にとって都合がよい流水環境も整備された。
これからも
7月8日、生物部員14人と神社役員12人が、湧水池となりの竹やぶで伐採を行った。これは、池の水面に当たる日光を増やすことが目的。生物部顧問の園原哲司教諭によると水草が生え昆虫も暮らしていた元の環境に戻すために必要な処置だという。伐採した竹はコンクリートの壁を覆う化粧垣根として使われた。
小菅さんを中心に始まったこの取り組みもちょうど1年を迎えた。園原教諭によると、湧水の環境がもとに戻るにはまだ多くの時間がかかるという。「自分たちが卒業しても生物部の取り組みは続いてほしい」と小菅さん。園原教諭は「これからも生徒たちが地域の皆様と一緒に湧水池を守っていければ」と話した。