女子柔道団体で全国大会出場を決めた三浦学苑高校の監督を務める 武田 淳子さん 横須賀市在住 36歳
本番で開花した「攻撃柔道」
○…信頼する教え子たちが全国出場を決めた瞬間、自然と涙がこぼれた。12年の監督生活の中で初めての経験だった。「自分を慕って、厳しい練習に耐え抜いてきた」。ひたむきに柔道に向き合う姿勢に、「なんとしても全国に行かせてあげたい」との想いがあった。準決勝の横須賀学院、決勝の桐蔭学園は戦力的にみれば相手の方が一枚も二枚も上手。それでも生徒には「勝てるから」の檄を飛ばし続けた。細かい指示は出さなくても、生徒とは以心伝心の関係。練習で染み付いた「攻撃柔道」が本番で開花した。
○…柔道家として華々しい経歴を持つ。名門、日大藤沢高校時代は1年生で全国制覇、埼玉大学ではアジア大会で銅メダル、実業団のコマツでは日本代表として世界選手権も経験した。25歳で選手生活に区切りをつけてからは、指導者の道を選んだ。「それまでの柔道は自分のため。引退してからは(自分を)育ててくれた柔道に恩返しをするため」。高校時代の3年間で生徒は大きく成長する。それを導きながら、見守る現在の役割に面白さを感じている。
○…相手に合わせることなく力でねじふせる─。三浦学苑の看板である「攻撃柔道」はそのまま、現役時代の”武田スタイル”だ。監督就任後は「一本を取り切る」戦術を選手に徹底的に叩き込んできた。「常に攻めの姿勢を崩さない」という教えが、先の大会では見事にはまった。「実力よりも気持ちで勝った」と選手を褒め称えた。
○…「自分にとって柔道は勝負事」。限界を悟って現役を退いてからは、一度も実戦を戦ったことがないという。「勝てない戦いはする意味がない」と、どこが達観したようなセリフがこの人の性格を言い表す。強い女性も自宅に戻れば小3・小1という2人の男児の母親。「練習と試合でコミュニケーションの時間が割けないことが心苦しい」と嘆くが、指揮官として現場を離れるわけにはいかない。