稲村ガ崎地区「勝手踏切」 追加工事で完全閉鎖へ 今月から再開
民家の軒先をかすめるように走る江ノ電の車両―。鎌倉を代表するその風景にこの春、異変が起きた。稲村ヶ崎駅の東側エリアで、地域住民が利用していた遮断機もない「勝手踏切」が閉鎖されたのだ。江ノ電は「安全対策」を強調するが、地域住民は「日常生活が不便になるのはもちろん、津波からの避難など防災面でも不安」と戸惑いを隠さない。一部未完了だった箇所も今月から工事が再開。11月末までに稲村ガ崎の勝手踏切閉鎖工事は完了する見通しとなっている。
稲村ヶ崎駅周辺の線路は、元々あった道路に沿うかたちで敷設された。約60年前、稲村ヶ崎駅が移転した際、現在のホームがある場所から東側は、線路の北側に道路、南側に民家という配置になった。
南側の民家と線路の間の道路は幅1mほどと狭く、住民は生活路である北側の道路にわたる際に線路を横断。江ノ電側はそれを「黙認」するというかたちをとってきた。
こうした「勝手踏切」は江ノ電沿線全体で164カ所に上る。警報器や遮断機が取り付けられていないため、かねてから危険性が指摘されていた。2007年には稲村ガ崎で、2012年には由比ガ浜で接触事故が発生している。
話し合いなく住民反発
江ノ電が「安全対策」を理由に、稲村ガ崎地区の勝手踏切の閉鎖を住民に通達したのは今年2月下旬。その後、3回にわたって開かれた説明会で住民らは「津波発生時の避難路がなくなる」「家の前の通路が極端に狭く、封鎖されると荷物の運搬など支障がでる」といった戸惑いの声をあげたものの、3月末までに踏切部分の閉鎖とフェンス設置の工事が行われた。
江ノ電側の「事前の説明や住民の要望への対応もない」手法に住民は反発。津波避難路の確保などを理由に「安全対策を講じた踏切の設置」を鎌倉市から江ノ電に働きかけるよう求める陳情を、市議会6月定例会に提出した。その後、432筆の署名を集め、「市職員など第三者も交えた話し合いの場」を設けるよう、江ノ電側に要望していた。
追加工事を通知
今回工事が再開されるのは、南側道路のうち電柱が通路をふさいでしまっている場所。江ノ電は「11月末までに電柱を撤去し、工事を完了する」として、9月末に住民に工事の実施を通達した。
「安全対策の徹底のため、勝手踏切を閉鎖する方針に今後も変更はない」とする江ノ電に対し、住民らは「安全確保が必要なことは理解できるが、十分な話し合いもないまま、踏切閉鎖工事を進めることは認めることができない。江ノ電はまず話し合いに応じて欲しい」としている。
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