かつて鎌倉で盛んに行われていたものの、江戸時代中期に衰退したとされる「たたら製鉄」。その謎を研究し続けている県立鎌倉高校科学研究会が、鎌倉の海岸で採取した砂鉄を原料とした、日本刀づくりを目指している。生徒たちは「鎌倉の海岸から採れた砂鉄で日本刀を作り、これまでの定説を覆したい」と意気込んでいる。
衰退の謎明らかに
たたら製鉄は、木炭の燃焼熱で砂鉄を精製する日本古来の製鉄方法。かつて鎌倉でも行われていたが、江戸時代中期以降、急速に衰退したと伝わる。
鎌倉高校科学研究会が「鎌倉のたたら製鉄」をテーマに研究を始めたのは、2011年。同会は実際に鎌倉の砂鉄から鉄を精製する実験を繰り返しながら、鎌倉におけるたたら製鉄衰退の原因の解明に取り組んできた。
同会がはじめに行ったのは、鎌倉の砂鉄とかつてたたら製鉄が盛んに行われ、現在もその伝統が残る島根県の砂鉄との比較だった。京都大学の施設を借りて、採集した双方の砂鉄を2年半かけて分析した結果、「沿岸部である鎌倉の砂鉄はカルシウム含有量が多く鉄の密度が低い」ことが判明した。13年には「より品質が良い山間部の島根県のものに押され、鎌倉のたたら製鉄が衰退した」との結論を出した。
さらに14年には、鎌倉の砂鉄を使用して、より質の良い鉄を精製する実験にも着手。島根県で採れる「真砂(まさ)砂鉄」と鎌倉の「赤目(あごめ)砂鉄」の成分をより詳細に比較すると、チタン含有量等の違いから鉄の融点が「赤目」の方が低いことが明らかになった。
そこで、炉の下部に砕いた木炭を敷いて製鉄実験を行ったところ、融点が近く困難だった鉄と不純物の分離に成功。日本刀の材料にもなる純度の高い鉄「玉鋼(たまはがね)」を確認することができた。
これらの研究成果は、13年と14年に、日本学生科学賞神奈川県作品展で、最優秀にあたる県知事賞に選ばれている。
「定説覆したい」
最近の研究では、精製後の鉄を比較すると、鎌倉の「赤目」は炭素が多く叩くと割れてしまう脆さがあるが柔軟性があり、島根の「真砂」は炭素が少なく、非常に硬い性質であることが分かった。
そこで製鉄前の砂鉄を「真砂」に近づけるため、採取した砂鉄を磁石で地道に選別。磁石に反応したものだけで今年の夏に製鉄実験を行ったところ、以前より大きく密度の高い玉鋼を精製することに成功した。11月中には、炭素量の多い砂鉄の製鉄実験を行い、玉鋼との違いを検証する予定だという。
今後は、実際にこの玉鋼から日本刀が作れるのか、刀鍛冶へ依頼して実証することが当面の目標となる。
井田崇士部長は「先輩たちが積み重ねてきた研究に、新たな道が開けて達成感がある。鎌倉の砂鉄から日本刀が作れるかもしれない、というロマンに向けてコツコツと頑張りたい」と語り、同会顧問の木浪信之教諭は「鎌倉の砂鉄では日本刀は作れない、と古くから言われてきたが、一連の研究成果でそれを覆し、その可能性について探っていきたい」と話している。
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