平塚市美術館で4月5日(日)まで立体造形の展覧会を開いている 小田 薫さん 中海岸在住 35歳
「記憶を呼び起こす造形を」
○…「作品を観てもらうことで、鑑賞者自身の記憶を呼び起こしてもらえたら」。金属を打ち延べて形成する「鍛金(たんきん)」という技法を用いた、建物を模した立体造形を展示。寒川町の資材置き場一角のアトリエを拠点とし「常に熱と重さとの勝負。手の皮も随分厚くなった」という作業は4000℃の炎で鉄を溶かし叩き、切り、繋ぎ合わせるもの。火の粉で上着が溶けることもしばしばで、200kgの作品を仕上げたことも。それでも「この道しかない」。その一言に尽きるようだ。
〇…25歳までを千葉県柏市で過ごす。「わがままで、妹や友人とケンカすることも多かった」という幼少期。他人と折り合いがつかない時には一人黙々と雑貨や洋服作り、料理に取り組んだ。高校時代に素質を見出され、美大進学予備校に通う中「この道しか自分にはない。何が何でもやってみせる」と決意し3浪の末、東京藝大に入学。木工や染織、漆を学ぼうとしていた矢先、予期せず運命の出会いが待っていた。人数合わせで受講した「鍛金」の授業。鍛冶場の様な雰囲気、熱して真っ赤になった鉄の棒材に一瞬にして心を奪われた。「血がたぎるような感覚に襲われて。一目惚れでした」
〇…大学4年時に祖母と愛犬の死、そして長年暮らした地を離れ、家族と共に茅ヶ崎への転居を経験。喪失感と不安が蔓延する日々の中で「人の生死や自分の根本と向き合い、ありのままを表現していこう」と乗り越えた。自身の作品作りの根拠を突き詰めようと、同大学院の修士課程、さらには博士課程にも進み研究と創作に没頭した。
〇…現在は創作活動を続けながら、週4日東京の工芸高校定時制で講師を務める日々。「休みという休みはない。常に作ることで頭の中がいっぱい」というが、自分で作った料理と共にお酒を嗜むのが唯一のリラックス方法。「今後も観る人の記憶が住めるような、造形を作り続けるのが目標」。真っ直ぐな瞳で話した。
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