返還率向上の壁問われるモラル
環境省のまとめによると、2010年度に全国で殺処分された犬は約5万2千頭に上る。自治体に引き取られた動物は、殺処分を待つ運命なのか―。20日から始まる動物愛護週間を前に、県動物保護センター(市内土屋)を訪ねた。そこには、収容犬の命を絶やすまいと、返還・譲渡に努める職員の姿があった。
「安易な犬の殺処分は行いません」。センターの久島昌平所長はこう言い切る。
収容期間は5日間だが、期日を過ぎた全ての犬が殺処分の対象になるわけではない。センターの外で新たな生活が送れるよう、可能な限り収容期間を延ばして機会を探る。今年3月に保護された秋田犬は、すでに収容から半年が経った。「この子は大人しいしまだ若い。引き取り手が見つかると良いのですが」と職員も気をもむ。
センターは、政令市と横須賀市、藤沢市を除く市町村を管轄している。昨年度収容した犬は700頭。うち138頭は、転居や病気を理由に飼えなくなった、噛みぐせが直らないなどの理由をつけて、飼い主が持ち込んだ犬だった。残りの562頭は、所有者の分からない状態で保護された。
センターでは、278頭を譲渡し、ホームページでの公示などにより飼い主が見つかった285頭を返還した結果、殺処分数は過去最少の132頭にとどまった。「昔は檻に何10頭もの犬が溢れて、やむなく殺処分を行わなければならないこともありました」と職員は話す。しかし今では、県は全国的にも殺処分の少ない自治体のひとつだ。
子犬と子猫を対象にした月1回の譲渡会では、ほぼ全ての犬猫が引き取られていくという。二度とセンターに収容されることのないよう、事前の講習参加と終生飼育を義務付けている。
ボランティアによる協力が、譲渡につながるケースも多い。センターには団体・個人を合わせて30のボランティアが登録しており、里親探しの代行などを担っているという。
収容数が減少すれば、殺処分の数も抑えられる。課題は、05年度から5割程度で横ばいが続く、所有者不明犬の返還率向上だ。久島所長は「鑑札さえ付けていれば、全ての犬を返還できる」と、飼い主のモラル改善を願う。
センターでもしつけに関する教室を開くなど、飼い主の啓発を図っている。動物とのふれあいの場を設け、動物愛護の意識を広める活動にも積極的だ。
「病気もするし年も取る。動物は”もの”ではありません。ペットとの素晴らしい生活を、飼い主にはいつまでも送ってもらいたい」。殺処分が最後の手段であってはならないと、職員は手放された小さな命と向き合う。
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