市美術館市民アートギャラリーで作品展を開いている 相澤 豊治さん 中原在住 70歳
病に負けず筆にぎる
○…70歳の節目に、「日本美術院 入選作品展」を開いた。通称”院展”と呼ばれるこの作品展に応募し続けて18年。52歳で初入選してから、これまでに27回もの入選を果たした。「『こんなに入選する人もなかなかいないから、展覧会を開いたら』という知人の勧めで」と個展を実現させた。12月2日まで、市美術館の市民アートギャラリーで開催されている。
○…新潟県出身。小学生のころから絵が好きで、コンクールでは度々賞をもらった。だが「絵だけでは食べていけない」と、目の前の進むべき道を歩んだ人生。中学を卒業すると家庭の事情で高校進学を断念し、集団就職で平塚の金型製造会社に勤めた。しかし進学への思いは断ち切れず、高校に通いながら働ける会社に転職し、26歳で平塚商業高校の定時制に入学した。30歳で卒業し、その後は外資系企業に就職。定年まで勤め上げた。
○…高校に通っているときも、働いているときも、筆をにぎらないことはなかったが、定年を機に禁煙したことがストレスで、描けなくなったことも。追い打ちをかけるように肺の病気も見つかり、医者から告げられたのは「平均余命は5年」という重い言葉だった。酷く落ち込み、気持ちがふさぎ込む毎日。だが、それを忘れさせてくれたのは、やはり絵だった。再び筆を取ると、それ以降は不思議と毎年入選するようになり、「『死ぬのか』なんてことは思わなくなりましたよ」と、ツヤの良い顔から光る歯がのぞく。
○…「絵を見て結婚を決めた」という、長年連れ添った妻と二人暮らし。ウォーキングや腹式呼吸をし、健康的な毎日を心がけているという。最近の検査の結果は、良好だそう。「諦めなければ、その人なりに生きる道があるんですよね」。自分で確かめるように頷きながら、自身の作品を愛おしそうに眺めた。
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