文豪や芸術家の「美手紙」 蘇峰記念館で特別展
明治の文豪・夏目漱石と森鴎外、近代日本美術の発展に功績を残した岡倉天心、初代内閣総理大臣・伊藤博文、ラストエンペラーとして知られる愛新覚羅溥儀。錚々たる歴史上の人物たちの書簡を集めた「手紙ってアートだ!!」展を徳富蘇峰記念館(二宮町)で開催している。「美文字」への関心が高まるなか、手紙の美しさやアート性に注目した。
特別展では「手紙はアートである」という観点から、文学者・芸術家・政治家・軍人・実業家・書家などさまざまな分野を代表する25人31点の書簡を展示。本人専用の原稿用紙に書いた漱石の手紙は珍しいものだという。才色兼備の誉れ高い大正の歌人・九条武子の手紙は赤い便箋と封筒に流麗な筆使い。清朝最後の皇帝・溥儀の書簡は大きな朱印が目を引く。
版画家・棟方志功が蘇峰の秘書を務めた塩崎彦市氏に宛てた絵手紙は、百貨店の包装紙が便箋代わりだ。棟方は、身の回りにある紙なら何でも使うのが癖で、失礼な用紙であることを許してほしいと文末に記している。「自由奔放で飾り気のない人柄が滲み出ている」と学芸員の塩崎信彦さん。
このほか小泉純一郎元首相の祖父で力強い毛筆が特徴の小泉又次郎、日米開戦直後の高揚感の中で便箋14枚に鉛筆で綴った松岡洋右、現代書道の父と称される比田井鴻の手紙なども展示。「蘇峰がよく使った『書は人なり』の言葉に通じるような、手紙に込めた並々ならぬ愛情が伝わってくる。読み手(蘇峰)もそれを理解し、心に響いていたのではないか」と塩崎さんは話す。
蘇峰が蒐集した作品の中から生き物を描いた日本画19点、新島襄や徳富蘆花らの明治〜昭和の年賀状も同時に紹介している。特別展と「日本画の中のかわいい動物・生き物コレクション」展は12月7日(日)まで。「各界著名人からの年賀状」展は4月13日(日)まで開催中。
開館時間午前10時〜午後4時。月曜休館(祝日の場合は開館・火曜休館)。入館料一般700円。問合せは【電話】0463・71・0266。
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