子育ての語らい⑫ 「発想」を変えて「楽しむ」子育て
~子ども自身が獲得するのが真の力。親の助けで得るのは見せかけの力~
娘が小学一年生のとき、担任の先生のお洋服を破いてしまったことがありました。どうお詫びをすべきか悩みましたが、結局は“ごめんなさいの気持ちだけ”を持って行きました。
そして娘には「いつか立派な大人になって、先生に新しいお洋服をプレゼントしましょう」と学年が上がるたびに話しました。
18年を経てそれを実現した娘を前に、先生は目に涙を溜めて「本当にありがとう」と言葉をかけてくださったそうです。娘は長年思い続けたことを成し遂げ、自信を持ち、その喜びを知り、また人との繋がりの大切さを実感したようです。
当時の私は迷いながらも“普通なら”ということをしませんでした。もしあのときお詫びの品を持参していたら気が楽になってしまい、私も娘もその失敗を終わったこととして忘れ去ってしまったかもしれません。
心豊かに生きていくために軸となるすべての力は、子ども自身が獲得して身に付けていかなければ本物にはなりません。子どもを助けるつもりで出した大人の手が本当は誰のための行為なのか、実は強い力で子どもの手を引っ張っているだけなのではないか…。成長のチャンスを奪わないよう、物事の本質をしっかり見ていきたいものです。
プロフィール▼大学助手として勤務後、音楽教室を主宰。ピアノ・リトミックを教えて26年。通常の定期的な教室のほか、行政の依頼でも指導。人間教育をも行うリトミックが高く評価されている。著書『大丈夫大丈夫!子どもはぐんぐん伸びていきます』出版
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