子育ての語らい㉞ 勝負の世界に挑むということ 後
コンクールに挑戦することを決めたKくん。最初のレッスンでは自尊心を思い切り崩しました。心がザクザク切られ、目に涙を溜めるKくんですが、私も心の中では涙が流れています。ここで自尊心を無くし、自惚れのない気持ちになるのは勝負に挑むために絶対に必要な最初の一歩なのです。
「30分間、家で練習をしたらまた来なさい」ということもたびたびあって、辛い練習を毎日続けていたKくんの耳は鍛えられていきました。するとあるとき突然、きれいな音がわかる瞬間が訪れます。
Kくんは努力を重ね、とうとう予選を突破して本選に進みました。最終レッスンを終えた当日、お父さんが運転する車に乗り込んだKくんは、家族みんなで窓から顔を出して私に大きく手を振ってくれました。ご家族が一丸となって決戦の地に向かう姿にとても感動しました。
Kくんが厳しい勝負の世界に立ち向かうことができたのは、どこまでも子どもをサポートするという強い気持ちがご両親の子育てのベースにあったからこそです。Kくんがコンクール出場までに得たものは一生の宝物ですし、勝負の世界がこんなふうに家族を育ててくれることもあるのです。
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