小田原出身の4人組バンド「藍坊主(あおぼうず)」と南足柄出身の映画監督・勝又悠さん(34)が手を組んだミュージックビデオ(以下、MV)がこのほど完成した。その縁を取り持ったのは、昨年11月に急死した俳優の阿藤快さんだった。
同郷でありながらこれまで交流のなかった藍坊主と勝又監督を繋ぐきっかけとなったのは、阿藤さんのお通夜。以前から藍坊主のファンだった勝又監督は、この出会いを機にCDの宣伝などを目的としたMVの制作に名乗りを上げた。「(藍坊主の)MVをすべて見ているが、ファンである俺の方が絶対上手く撮れる自信があった」。その熱意が伝わり、昨年12月9日にリリースされた17枚目のシングル曲『魔法以上が宿ってゆく』のMVで、初めてタッグを組むことになった。
この曲について、「広い意味でのラブソング。大切な人へ想いを伝えるという気持ちを込めた」と、作曲を担当した藍坊主のリーダー・藤森真一さん(32)。勝又監督は「音そのものにカラフルな印象を受けた。本当に歌が好きで、心底歌いたいという想いが伝わってきた」。そのイメージを一人の女子高生を通じて、演出した。MVの最後のシーンには感謝の意を込め、阿藤さんの名前が表示されている。
なお、MVは動画サイトのYouTube(藍坊主『魔法以上が宿ってゆく』MVで検索)で閲覧できる。
学んだ優しさ、地元愛
結成16年目を迎えた藍坊主は、11年前に発表したメジャーデビュー後初のシングル曲『ウズラ』のMVで、同郷の阿藤さんに出演を打診した。藤森さんは、「『地元の後輩ならノーギャラでもいいよ』と、気持ち良く仕事を引き受けてくれたことを覚えている」と当時を振り返る。
また、タイトルのウズラにちなみ撮影当日、ダメ元で用意したヒヨコの着ぐるみも「演出上、大切なんだろう」と、嫌がることなく被り、撮影に臨んでくれた秘話を口にした。「大御所でありながらその柔軟な対応と優しさ、仕事に対する向き合い方に驚いた」と語った。
対象的に、阿藤さんとほろ苦い出会いをしたのが勝又監督だ。2005年に行われた第1回小田原映画祭に出品。同映画祭の審査員だった阿藤さんはその作品に対し、「全然おもしろくない。せっかく小田原で撮影しているのに、どこで撮影しているかも全くわからない」と酷評した。その発言に、若気の至りもあり「いつか一緒に仕事をする時が来る。その時まで俺の名前を憶えておけ」と、勢いのまま捨て台詞を阿藤さんに放ったという。
それから9年後の2014年。勝又監督のメジャーデビュー作品となった『いつかの、玄関たちと、』に阿藤さんが出演し、大雑把で男臭い役を完璧に演じてみせた。勝又監督は「思い描いていた役柄そのもの。ほとんどのシーンが一発OKで、『さすが』の一言」とその演技力に脱帽した。
藤森さんと勝又監督は、「せっかくの縁。阿藤さんに恥じない仕事をし、地域のために今後も一緒に仕事をしていきたい」と、天国の阿藤さんに誓った。
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