「第14回まつだ桜まつり」期間中の初出荷を目指し、松田町の中澤酒造(鍵和田茂社長)で松田山の桜を使った酒の仕込みが行われている。開発者は同酒造11代目の後継者にあたる鍵和田亮(あきら)さん(25)。伝統的な造り酒屋で、まったく新しい酵母を使って新作を造るケースは珍しく、また花酵母を使うのは県内初。亮さんは「今までのウチの酒には無かった風味が出ました」と出来栄えを語る。
亮さんは東京農業大学の醸造科学科を卒業後、宮城県の酒蔵「一ノ蔵」での2年間の修行期間を経て、昨年10月から家業の酒造りに従事している。
桜を使った酒の開発は、大学の卒業研究がきっかけ。「どうせ研究するのなら、将来にわたって造り続けられるような特徴的な酒を造り、地域に貢献したい」と考えた亮さんは、松田山の花を酒造りに活かせないかと卒研のテーマを「天然酵母の分離と同定」に決め、花びらから酵母を分離する研究を始めた。
どの花の中に天然酵母がいるかを調べるため、町の花であるコスモスをはじめ大島桜、おかめ桜、河津桜、アジサイ、みかんなどの花びらを採取して調査した。三角フラスコの中で麹と水、蒸し米を加え、25℃で25日間ほど変化を見る。天然酵母があれば発酵が見られるが反応があったのは河津桜のみ、それも4回採取したうちの1つだけだったという。そこからさらにアルコール度数や酵母の形、遺伝子などを調べて酒造りに適した酵母を選別、試験的に酒を仕込む実験もしたという。この時の酵母を研究室で保管しておき、今回の酒造りで使用した。
新たな”宝”で地域貢献
新しい酒には「自分の分身のようなもの」との思いから『亮(りょう)』と名付けた。桜の香りはしないが、すっきりとした辛口で少し酸味のある味。2月中旬から720mリットル瓶590本を、中澤酒造や町内の酒屋で販売。秋口には、熟成させたものを450本販売する予定だ。価格は1580円。
亮さんは「長く受け継がれてきた”宝”を守り伝えながら、新たに自分自身の”宝”を造っていくことも必要。この酒を飲んだ人が松田町に興味をもち、町へ足を運んでもらえるようになれば地域活性にもつながる。皆さんに愛される酒になってくれれば幸せです」と思いを語っている。
足柄版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|