山北町の「森林セラピーツアー」が人気だ。趣向を凝らして打ち出すツアーの参加者は9割が町外からの観光客でリピーターも多い。
ツアーは日帰りで、NPO法人森林セラピーソサエティ(瀬上清貴理事長・東京都千代田区)が認定した「森林セラピー基地」(山北町健康福祉センター内)をスタート。手軽に歩ける「河村城址コース」、洒水の滝まで足を延ばす「河村城址・洒水の滝コース」、健脚者向けの「西丹沢西沢コース」の3種類がある。公認ガイド1人につき5人の参加者を受け持ち、1回あたり15人程度がグループごとに森へ入る。
出発の前後には血圧や脈拍数を計測し、ストレス度の指標となる「唾液アミラーゼ」の数値変化を確認する。複数のポイントで足を止め、木々を包む空気や風、木々の香り、音などを五感で感じ、地面に横になり静かに過ごす時間もある。昼食後のプチ企画には毎回趣向を凝らし、リピーターを飽きさせない工夫も怠らない。
昼食時には、管理栄養士と地元主婦らが考案した「森林(もり)のおもてなし弁当」を用意。食材は半分以上が山北町産、その他も国産にこだわり、カロリーや塩分、野菜の量も細かに規定した手作り料理を提供する。
「森林セラピー」とは、癒し効果を医学的に検証した森林浴効果の総称で、同NPOが普及に取り組む森林での保養活動。
森林が面積の9割を占める山北町は、この森林を活かした町民の健康増進・疾病予防、地域振興を図ろうと2008年に調査・研究を開始。専門家による被験者12人の実証実験や審査などを経て、11年3月に「森林セラピー基地」の認定を受けた。当時は全国で44カ所目、県内では2カ所目の認定だった。
難所に挑む「登山」や、景色を楽しむ「ハイキング」、歩くことが目的の「ウォーキング」などとは違い、「癒しやリラックス」が最大の目的。町では「山歩きの初心者や高齢者でも参加しやすいため参加者は8〜9割が女性で、世代も20〜80代までと幅広いのが特徴」だと話す。
8月23日に開催されたツアーには予約した13人が参加。埼玉県から始発電車でやってきた40代の夫婦や、県内の20代カップル、横浜市と鎌倉市から参加した女性、綾瀬市から参加した81歳の女性は心臓を患い、退院後の初めての遠出先に山北の森林セラピーを選んだという。あいにくの雨模様にも「雨の香りがいい。普段は吸えない空気でとても満足よ」と話していた。
コースとなる森林や河村城址、洒水の滝には、倒木や雑草、傷んだ看板が目立つ。今後は庁内を横断したコースの整備が待たれるところだ。
次回は10月25日(土)の開催。(問)山北町森林セラピー運営協議会事務局【電話】0465・75・0822。
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