農作物の被害が深刻な有害鳥獣への対策として、松田町は4月から、狩猟免許取得にかかる費用の全額補助を始める。2015年度の鳥獣防除対策費232万円に関連費を盛り込み、次世代ハンターの呼び水にしたい考えだ。
松田町によると、シカやイノシシなどによる農作物の被害は松田町内で年間約60万円(2・7トン)。足柄上地域の1市5町でも年間560万円(9・5トン)だが「報告されているのはほんの一部。実態は非常に深刻」だという。収穫直前の農作物が被害に遭うことで営農意欲をそがれ、耕作放棄の引き金にもなるといい「報告するのも面倒なのが実態」と嘆く。
県の管理捕獲で年間約100頭のシカを捕獲する松田町内では、神奈川県猟友会足柄上郡支部(中野博支部長)のメンバー23人が年3回の集中捕獲を担うが、農作物への被害は後を絶たない。同支部では「ハンターの高齢化や法改正による狩猟免許更新の厳格化が重なりピーク時に180人いた会員が95人まで減った。いずれは駆除が追いつかなくなる」と警鐘を鳴らす。
立ち上がる次世代
狩猟には都道府県が発行する狩猟免許と登録が必要で免許取得の試験がある。 猟具の種類に応じて網猟、わな猟、第1種銃猟(銃器・空気銃)、第2種銃猟(空気銃)の4種類の免許があり、神奈川県では年4回試験がある。免許取得には約1万5千円の費用が必要で取得から3年毎に更新のための実技講習がある。
松田町では、従来は「わな猟」だけを対象としていた狩猟免許取得費の半額助成を2014年度から銃猟免許にまで広げ、15年度からは全額補助へ強化する。
町の補助制度で昨年秋に銃猟免許を取得した高校教諭の桐生海正さん(25)=松田町寄=は「祖父がイノシシ被害に苦慮するのを見て2年前にわな猟免許を取った。シカ被害やヤマビルの実態を見て銃猟免許も必要だと考えた」と話す。
現在は猟期の日曜日を中心に山へ入り、猟友会員として県の管理捕獲にも参加している。
鳥獣による食害対策は、猟による駆除のほか、餌場となる山の本来の姿を取り戻す取り組みも不可欠だ。国や県による包括的な強化も求められるところだ。
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