観光写真コンクールで活躍する 荻野 悦男さん 開成町吉田島在住 86歳
「達成感」今は「癒しに」
○…市や町が地域の観光名所をPRするために毎年開催している観光写真コンテストに作品の出品を続けている。カメラ歴は60年、趣味が高じて全国のコンテストに出品してきたが、近頃は身近な地域を被写体に選び「人のいる風景」をファインダーに収めている。今年は山北町で最高賞、南足柄市と開成町でそれぞれ特選を受賞した。「風景だけの写真よりも、人がいるほうがいい」という。
○…終戦の2年後に国鉄に入社し、田町電車区で運転士や技術職を歩んだ。「『お前は電車をやれ』と親父から言われたことを覚えている」。その道へ進み入社1年で横須賀線に乗り込み、関東一円の路線を経験した。なかでも引き揚げ列車に鮮烈な記憶が残る。この場面を見たのがカメラを始めるきっかけにもなった。「家族が待つホームに兵隊さんが降り立つと、あちこちで抱き合う姿があった。その場面が忘れられない」と回想する。
○…新幹線登場の6年前に東海道本線を走る特急「こだま」が運転を開始した。東京-静岡間の運転を担う日々もあった。「ここはいろんな思い出がある」。流線形で洗練された正面のボンネット。鉄道ファンが憧れる形状とは裏腹に、供給電圧が下がる静岡の手前では運転中に何度となくその裏側に入ることがあった発電機がありその調整が難儀だった。「下手したら感電死しちゃうからね。大変だったね」と秘話を明かす。
○…鉄道病院で知り合った看護師の奥さんとは、カメラを始めた20代半ばで結婚。「おっかあはよく家を守ってくれた」―。その妻は、すい臓がんを患うとみるみると弱り他界した。それから12年が経つ。「人生で一番壮絶だったね」―短い言葉のあとに目が潤んだ。昔は「達成感」を求めたカメラから、今は「癒し」をもらっている。4月15日は亡き妻の祥月命日。農作業に追われる日々の合間を縫い、近頃は電動自転車で撮影場所へ足を運んでいる。
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