「3年で観光客倍増させる」 元町職員の宇賀氏、町の舵取り役に
先月23日の真鶴町長選で元町職員の宇賀一章氏(60)が、329票差の接戦の末当選した。有権者は7094人、投票率は66・99%(前回68・08)。青木健前町長の選挙事務所と軒を連ねていた宇賀氏の陣営では突如拍手とともに「勝ったー」の声が沸き起こった。40年前に町役場に入庁し、建設課長や議会事務局長、診療所の事務長などを務め今年6月に退職。「真鶴景気倍増計画」を旗印に出馬表明した。貴船祭囃子保存会、東道祖神保存会の会長という横顔もあり、こうした祭礼関連の縁も宇賀氏を引き上げる力となった。
「報酬3割カットすぐ実行したい」
当選後のインタビューでは観光誘客への熱意を強調。「町民が潤うよう仕事をしなければ。観光、漁業、石材など分野ごとに担当をつけたい。真鶴の自然や美味しい魚、小松石などを関東一円に足を運んで宣伝したい」。厚労省人口問題研究所統計によると、23年後の真鶴の人口は現在の約8千人から5千人規模まで減るという。高齢者数は横ばいのまま生産年齢人口だけほぼ半減する予測だ。流入人口を増やそうと宇賀氏が打出した政策の一つが中学生までの医療無料化。財源は町長報酬の3割カット分(4年間)で2千万円を見込み「すぐにでも着手したい」と決意を語った。町診療所の運営は山北町や横須賀市と同様に、地域医療振興協会への委託にする。消防などの広域連携については「これまでのやり方でも支障はない。消防については命に関わる事。今後も湯河原とも小田原ともうまくやっていく」と話す。岩在住。真鶴中、城北工業高を卒業後はトヨタ自動車のサッカー部(現在の名古屋グランパスの母体)に所属、FWとして芝を駆けた経験をもつ。
「町民の皆さんが選んだ結果」
青木氏は取材に対し「私の力不足で申し訳ない。町民の皆さんが選択した結果。皆さんで町を作ってほしい。これまで協力して下さった方には感謝したい」と語った。町のスポークスマンとして、取材の折も地元の魅力を語り出すと止まらなくなり「話が長い町長」という記者もいた。世界デザイン都市サミット(中国・韓国)などにも足を運んで真鶴を宣伝。石原プロから放水車を譲り受けたのを機にメディア露出した事も記憶に新しい。8年の任期中には日帰り客の割合が増える一方、宿泊施設の数は減った。新たな観光イベントも続々と立ち上げ、観光客数は震災などの影響を受けながらも年間100万人前後で推移している。これに対し宇賀氏は「3年後に観光客を倍増させる」という大きな目標を掲げた。
学校給食食材の放射能測定や津波避難カプセル導入など、青木町政の新規事業には周辺自治体にない斬新さがあった。今回の選挙では「幸せの鐘」「妊婦タクシー券」「ホタルの里」「マナ婚」など事業案の数々を盛り込んだが及ばなかった。
坂道だらけの町内では町職員がハンドルを握る無料コミュニティバスが人気だ。真鶴にしかないこの光景も、かつての新規事業のひとつ。行政サービス拡大を求める声に「本当は、余裕のある人が自家用車を出してくれたら、有難いんだけどね」。アイデアマンであると同時に、積極的に「共助」を語る町長だった。
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