南箱ルート 走ってみた 2019年開通目標に向け 県が再整備に着手
金時山近くの林道(約11km)を拡幅するなどして、箱根と南足柄を結ぶ、“南箱道路”整備事業が、今年度から始動した。観光振興や災害時の代替ルートとして期待が高まっており、黒岩知事は「2020年のオリンピックまでの完成」を明言した。ルートとなる林道は現在一般車両は通行できない。果たして実際はどんな道なのか。松田署の許可を取り、車を走らせてみた。
「南箱」のベースとなる林道は金時神社近くのゲートから始まる。約2km登ってたどり着いたのが「金時隧道」。中は真っ暗だが、トンネル内は一般車がすれ違えるほどの幅があり、県は照明設備を直す予定だ。
トンネルを抜けると、もうそこは南足柄市。箱根の稜線を望むちょっとしたビューポイント=写真下もある。金時山への登山道もありウグイスの声が心地よい。近くの草原にドクダミの花やホタルブクロが群生していた。県は「自然環境への影響を考慮して大規模な工事はしない」としている。
時折、時速40km以上で飛ばす車に追い抜かれたり、業務用車とすれ違った。松田署によると「無許可走行は違反です」とのこと。ルートはカーブの連続で全線見通しが悪い。道幅を広げて時速30km前後で走れたとしても、センターラインがなく安全対策は困難を極めそうだ。6カ所の橋は耐重量性や幅が足りないため、すべて新調される予定だ。道すがら、工事に向けた測量にも出会った。
風・地震・大雪−山に囲まれた箱根は過去の天災で幾度も道路が寸断され、生活を脅かされてきた。万が一の代替ルートは一本でも多い方が頼もしい。
しかし現地を走ってみて「期待しすぎか」との思いもよぎった。地図上に線を引っ張り、箱根と南足柄を新・周遊コースで結んだとしても、道中はひたすらきついカーブの連続。観光客、特に子どもやお年寄りには辛いだろう。酔い止め薬は必携だ。
事業費用はルート選定時に90億という試算も出た。県担当課は「90億円以下になるが、まだお伝えできない」「開通後に何台の車が走るのか推計できない。データがない」とも話している。我々地域メディアや地元首長、議員は、その効果をどう見るべきなのか。
約25分で南足柄側の矢倉沢に着いた。車で5分ほどの地にあるのが「夕日の滝」。霧を含んだ涼風に癒された。付近にはイノシシの皮が干され、箱根とは違ったアウトドアムードが漂う。地元住民にオススメを教えてもらうと「足柄峠からの夜景だね。最高だよ」。地蔵堂から車で約10分で大雄山駅に、さらに15分で東名大井松田IC(足柄上病院付近)に到着した。大井松田〜仙石原間は、渋滞なしで約50分だった。
【仙石原のまちの声】親戚が山北に住んでいるので便利になるのは有難い(主婦30歳)/品川から御殿場IC経由で箱根の別荘に遊びに来ているが、山の向こうに何があるのか正直分からない、南足柄への道と言われても(20代男性)/仙石原の土日の渋滞が良くなれば。土日や夏休みは交差点から御殿場方面に車がつながってみんな困っている(飲食店経営女性)/これまで通れなかったから守られてきたものもあるんじゃないの(50代女性・主婦)
【地蔵堂まちの声】観光客に箱根への道を聞かれることがあっても教えることができなかった。将来一般車が通れるようになるのは賛成(キャンプ場勤務男性・40歳)/観光客が増えるとゴミが心配。矢倉沢の老人達が拾っている(農業・70歳男性)/ここに来る観光客はハイカーや登山客が多い。そういう客をどう取り込むんだろう(相模原市からの登山者・20代男性)/昔に比べてゴルフ関連客が減っている、道路の計画は嬉しい(路面店)