人や動物の血を吸うヤマビルの被害軽減に向け秦野市では今年度から、ヤマビル被害防止対策事業を新設。これまでの生息調査や森林整備に加え、ヤマビル用殺虫剤を用いた積極的な駆除など、踏み込んだ対策を実施する。
市内でヤマビル被害が初めて報告されたのは1998年頃から。北地区や東地区で報告があり、ここ数年で生息域は上地区、西地区、北地区まで拡大している。
湿った山中に生息するヤマビルは、本来広い範囲を移動する生き物ではない。シカやイノシシなどの野生動物に付着し、動物が人里近くまで出没するようになると人への被害が増え、生息域も拡大し始めた。
市ではこれまで、地下水に配慮して薬剤での駆除を極力控えてきた。落ち葉かきなどで地面を乾燥させ、ヤマビルが生息しにくい環境を作ることで対策してきたが、生息域の拡大は抑えられず、近年の登山ブームで入山者が増加していることもあり、積極的な駆除に乗り出すこととなった。
新設した同事業では114万2千円の予算を計上。農林業団体や自治会などが行うヤマビル被害防止活動に対して補助があり、刈払機や殺ヒル剤の購入経費なども補助の対象となる。環境に影響の少ない殺ヒル剤は一般的な農薬に比べ数倍と高価なため、補助を希望する声が多かった。
6月11日には、同事業の第1回目として丹沢山小屋組合によるヤマビル駆除が戸川公園付近で実施された。ヤマビルが活発化する梅雨時期にあわせて行われ、組合員など約30人が林道・登山道のヤマビルを駆除した。市環境保全課では「これまでの環境整備も継続して実施し、具体的な対策マニュアルの配布や研修会を実施することで、市と地域住民の協働でヤマビル駆除にあたる」と話す。
拡大防止に向けシカの管理捕獲も
ヤマビルの生息域を広げる要因となっている野生動物についても、市では県と連携して対策を進める。
特にシカについては増加が激しく、「昭和50年代の禁猟により個体数が増えすぎて、既に餌が足りていない状態(同課)」で、市内では農業被害が1件で数百万規模にもなるケースもあるという。
シカの数を管理している県では、丹沢山系でのシカの個体上限を5千500頭としているが、管理捕獲の頭数を増やして5年間で生息数を1500頭まで減らす計画だ。同課では「ヤマビルや人里の農業被害防止という面もあるが、管理捕獲を増やさなくては、シカの生態系維持にも影響が出るほどに増えている」と現状を話す。
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