「日が昇る少し前、金時山に登ると、自然が織りなす絶景に出会えることがある」。そう語るのは秦野市大秦町在住の高橋光久さん(68)。7年間で2000回以上の早朝登山でカメラに収めてきた作品約70点を、8月30日(火)から6日間、秦野市立宮永岳彦記念美術館市民ギャラリーで開く自身初の写真展で展示する。
高橋さんの作品に写るのは、堂々たる富士山や、連なる吊るし雲、裾野で朝日に輝く御殿場の町、大山や江の島、弘法山、遠くに見えるスカイツリー、白い虹…。フレームから溢れんばかりに、鮮やかでドラマティックな情景が広がっている。色彩の調整などのデータ処理を施さず「大自然のありのままを写す」というのがモットーだ。
きっかけは60歳、共に農家として働いていた母の死を機に、手をかけていたイチゴの栽培をやめたこと。ほかの作物を育てる合間、中学生から続けているカメラを手に金時山の風景を撮りに行き、「目の前に景色がどんと迫ってくる感覚に魅了された」という。
それからは雨や雪でも、特別な予定がない限り、ほぼ毎朝金時山に登ってきた。夏は午前2時に起床。足柄峠の登山口まで1時間、自家用車を走らせる。日の出が遅い冬でも5時過ぎには家を出る。
登山口で、松田町や小山町、御殿場市に住む登山仲間と落ち合うことも多い。「毎日のようにここへ来ているうちに友達になったんですよ」。闇に包まれた山道を懐中電灯で照らしながら、一緒に頂上を目指す。2・3月、膝まで雪が積もっている時期でも、アイゼンを履き、雪をかき分けて進んでいく。
道中、数カ所の撮影ポイントで立ち止まり、カメラを構える。「景色はその日ごとに絶対違う。地味だけど毎日撮り続ける事で、何年かに1度、目の覚めるような色の空や絶景に出会えることがある。それが面白い」
金時娘は山の母
夜明け前、真っ暗な山小屋に辿り着くと、まず小屋の扉を開け、さい銭箱を出す。60年以上、頂上の山小屋で暮らしている「金時娘」こと小見山妙子さん(83)の仕事を手伝うのだ。
小見山さんとはすっかり気心の知れた仲。用事があり金時山へ行けなかった日の翌日、小見山さんは「高橋さんが来なくて寂しかったよ」と漏らすという。そんな小見山さんを、高橋さんは「おかあさん」と呼ぶ。
昨年10月、高橋さんは2千回目の登頂を遂げた。小見山さんはそれを祝い、直筆で色紙を書いて、記念に渡してくれたという。高橋さんは「小見山さんや山の仲間がいるから続けられた。可能な限りこれからも登りたいですね」と話した。
写真展は8月30日(火)〜9月4日(日)、宮永岳彦記念美術館市民ギャラリーで開かれる。午前10時〜午後5時(30日は1時から、4日は3時まで)。入場無料。
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