秦野市鶴巻北の八木実さん(68)が、旧・満州国時代に首都が置かれていた中国長春市の歴史博物館「偽満皇宮博物院」へ、父・庄司さんの遺品を寄贈した。寄贈されたのは庄司さんが中国で従軍時に携行していたもので、出征にあたり親族から贈られた日章旗や、当時務めていた南満州鉄道関連会社の同僚などから贈られた千人針、軍歴が書かれた軍隊手帳、手作りの紙製の仏様など。庄司さんは筆忠実(ふでまめ)で、もう一つの手帳には「2月16日 いよいよ敵米英機動部隊日本本土近くに迫る」など、日々の出来事などのメモもあった。同博物館には既に多くの収蔵品があるものの「誰がどのように使用していたのか」が明確に分かるものは珍しく、実さんは同館から感謝状を贈呈された。
実さんは学生時代に博物館学を学んでおり、「国内で戦争遺品の寄贈を積極的に呼び掛けている大きな博物館は聞いたことがない。管理も適性になされていると聞き、寄贈した」という。
遺品は、中国の大学院教授で、桜美林大学講師の李素楨博士=秦野市鶴巻北=を通じ寄贈された。李博士は「日中口述歴史・文化研究会」の創設者の一人で、同会では日中友好のために日本と中国の歴史体験者への聞き取りを行い、両国民の共通した歴史観を模索する研究を行っているという。
また、李博士は戦時中の軍事郵便を収集し読みやすく書き直したり、戦時中の手紙類を現代日本語に訳す作業を行っており、実さんも協力することになった。 実さんは「当時の日本人が書いた手紙は、漢字も旧字体だし、文体も古いので、現代の大学生にとっては全文の3割ほどしか解読できないそうです。この研究を通して、戦争をふりかえり、今後の平和を築くことができれば幸いです」と話している。
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