欧米では流通している乳児用液体ミルクの日本での販売が今年春に始まる。鶴見区の1人の主婦が有用性を訴える活動を続けたことで国やメーカーが動き、解禁につながった。この主婦は「液体ミルクの存在を多くの人に知ってほしい」と願っている。
液体ミルクは牛乳などが原料で栄養成分が調整済みのもの。紙パックなどから哺乳瓶に移したり、使い捨ての乳首を通して乳児に与える。欧米では粉ミルクとともに選択肢の1つになっている。粉ミルクのようにお湯で溶かした後に冷ますといった手間は不要で、常温保存が可能。WHO(世界保健機関)は粉ミルク作りの際の菌混入リスクを考え、災害時は液体ミルクの使用を推奨している。
しかし、日本では食品衛生法に関する省令が粉ミルクを想定したものだけで、液体ミルクの国内製造・販売ができなかった。
災害時利用に期待
鶴見区の主婦・末永恵理さんは、2014年に娘を出産した後、授乳の苦労から液体ミルクの存在を知る。国内でも製造できるようにと、同年からインターネットで署名を開始。「全国の母親から『欲しい』という声が届いた」と末永さん。これまでに4万筆を超える署名が集まった。反響の大きさを受け、一般社団法人「乳児用液体ミルク研究会」を立ち上げ、国やメーカーなどに要望を伝えたり、全国各地へ出向き、講演活動を始めた。
末永さんに加え、日本小児科学会なども解禁や備蓄品としての必要性を訴えた。16年の熊本地震で外国製液体ミルクが支援物資として注目されたことや政府が掲げる女性活躍へ向けた育児負担軽減の流れを受けて国が動いた。18年8月に厚労省が省令を改正し、製造・販売が可能になった。11月には、江崎グリコが紙パック製の商品を19年春に販売すると発表。価格は未定。末永さんは「粉ミルクより割高になるが、需要が増えれば価格も下がる。まずは多くの人に知ってほしい」と話す。
災害時の備蓄品としても期待される。現在、市内の地域防災拠点には粉ミルクと哺乳瓶が20セット配備されている。市総務局は液体ミルクの備蓄に関し、「販売後の使用状況を見ないと何とも言えない」としている。
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