コラム「学校と社会をつなぎ直す」㉟ 「教師が教えない授業」??? 桐蔭学園理事長 溝上慎一
「教師が教えない授業」なるものがもてはやされているが、誤解と混乱を招く喧伝である。これは「子ども中心の授業」「子どもを主語にした授業」と呼ばれるべきもので、学術的には、教授パラダイム(教師中心)から学習パラダイム(学習者中心)への転換と謳われてきたものである。教師が何を教えたかではなく、子どもが何を学び身につけたかを教育成果の指標にしようという時代的趨勢に基づく転換が求められて久しい。
残念ながら、学校教育で教えられることを習得しても、それだけで将来の仕事・社会で力強く生きるには不十分な時代になっている。習得した知識や情報の有効期限は短く、かつ新しい知識や考え方、技術がすさまじいスピードで出てくる現代社会で、学校教育を基礎として、人は学び続ける主体的な学習態度を身につけなければならない。
この主体的な学習態度を身につけさせるために教師は知識・技能等の基礎・基本を教えながら、他方で子どもの主体的な学習を促す学習(環境)デザインをお膳立てする。教師の知っていることを教えるだけのかつての授業に比べると、今の教師に求められる授業力は著しく高いものとなっている。そこまでしても学ばない子どもは多い。「教師が教えない授業」などと、まるで教師が不要であるかのような、放任主義を助長するような喧伝は即刻やめてもらいたい。
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